MLB Column from WestBACK NUMBER
高津臣吾は、挑戦を忘れずに
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byYasushi Kikuchi
posted2005/03/24 00:00
前回の冒頭で触れたフロリダ、アリゾナそれぞれ1週間のキャンプ取材を無事終えた。日本人選手が少ないアリゾナでもやはり1週間という期間は短く、どうしてもアスレチックスの藪恵壹投手の取材に回ることができなかったのが悔やまれる。
その反面、意外なところで意外な選手と再会できた。マリナーズのキャンプ地近くにある日本食レストランに出かけたところ、レンジャーズのソリアーノ選手が来ていた。彼とは大家投手を取材しているときに何度も顔を合わせた間柄。「元気〜?」と、人懐こい笑顔とともに広島時代に憶えた流暢な日本語で声をかけてくれた。いつの間にかメジャー屈指の“打てる二塁手”に成長したソリアーノ選手。今季も彼の活躍に期待している。
さて、前回の大家投手同様に、アリゾナでぜひ取材したい選手がいた。ホワイトソックスの高津臣吾選手だ。昨年はあれだけの活躍をしながら、一度も取材する機会がなかった。この機会にぜひメジャー2年目に期する思いを聞いておきたかったのだ。
「2年目に期するもの?特別な思いはないですね。ただ常に挑戦するつもりでやっていければと……。その気持ちだけは忘れずにいきたいです」
今季は井口選手が加わったこともあり、日本人メディアに追いかけ回されることもなく、終始リラックスした姿で調整を続けていた高津投手。やはりベテラン選手らしく、その言葉にも何ら気負いはなかった。
昨年は4月下旬から26.2イニング連続無失点を記録。すぐに首脳陣の信頼を掴み、6月中旬にリリーフからクローザーに転身。その後も高津投手の活躍は続き、地元USセラー・フィールドでは高津投手の登場が一大イベントになっていたらしい。確かにドジャースのガニエや、パドレスのホフマンなど他のクローザーでも同じ現象がみられるが、これは地元ファンに認められたクローザーだけが許される特権。それを高津投手は1年目で勝ち取ってしまった。
その分、すでにファンの目は高津投手を「抑えて当たり前」と見ている。今季はそのファンの期待に応えていかねばならない。さらに石井投手が何度も繰り返しているように、1年目より2年目、2年目より3年目と、年を重ねるごとに成功するのが難しいメジャー。プレッシャーはないのだろうか。
「ファンの声援は嬉しくもあり、パワーにもなります。根本は自分のために野球をやっていますが、ファンの期待に裏切らないように頑張りたい気持ちはあります。1年間クローザーが目標? そうできたらいいですけど、クローザーじゃなくても構わないですよ」
あくまで自然体の高津投手は、こう続けてくれた。
「確かに(2年目に)やらなければならないことはあります。それは(具体的に)言えません(笑)。ただ技術や情報面に関してはメジャー以上に日本の方が進歩していると思ってます。その中で13年間やってこれたので、ちょっとずつ何かを変えていくというのは日本でもここでも同じ。毎年同じことの繰り返しですね」
高津投手の言葉を聞き、改めて彼がヤクルト時代に築き上げた自分の“スタイル”を武器に、メジャーで勝負しているという思いが伝わってきた。偶然とはいえ、現在メジャー・キャンプに参加している日本人全16選手のうち、高津投手他5選手(野茂投手、長谷川投手、木田投手、藪投手、友利投手)が同期。きっと彼らも日本で培った“スタイル”に誇りを持って、日本人選手として日々戦っているのだろう。
そんな高津投手だが、今年からグローブに日の丸をあしらっている。以前から南米系選手の間で流行っていたのだが、日本人では彼が初めてだ。
「特に理由はないです。アクセサリー的なもんです。でも、もしかしたら塗りつぶさなくてはいけなるかもしれないですから」
高津投手がいうように、打者からクレームがついた場合、削除しなければならない。果たしてシーズン中彼の日の丸は残り続けるのだろうか。ちょっと注意を払っておいてほしい。