ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2006年 アジア杯予選 VSインド 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byToshiya Kondo

posted2006/02/24 00:00

2006年 アジア杯予選 VSインド<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 ペナルティボックスの右サイド、ゴールライン近くまで攻め込んだDF加地から折り返したボールがMF小野へ出る。ボールはMF小野を経由してMF長谷部へ渡ると、狙い済ましたシュートとなって相手ゴールへ向かう。GKが反応しようとしたそのとき、ボールはGKの手前でFW巻の体に当たってコースを変え、ゴールネットに突き刺さった。

 ハーフタイムに受けたジーコ監督の指示を実践して得たゴールだった。

 日本はこの後半12分のゴールを含めて後半に5得点を決める猛攻でインドに6−0と快勝し、2月22日、横浜の日産スタジアムで行われたアジアカップ予選でタイトル防衛へ向けて好スタートを切った。

 2−0とリードを奪ったあとは、攻撃練習さながら、いろいろな形からゴールを決めた。

 右コーナーキックのセットプレーからMF福西のヘッドで1点。FW久保と後半交代出場のFW佐藤のツートップのワン・ツーから決めた1点。右サイドバックの加地が相手のクリアボールを素早く前線へ戻して佐藤が決めた1点。中央の攻めから小笠原が相手を引きつけて久保が決めた1点。久保はフィンランド戦に続く得点で、さらなる復調振りを示した。

 ただ、前半のプレーには課題が残った。

 前後半で30本という日本のシュートのうち(インドは同3本)、前半に放たれたのは12本。このうち、前半32分の小野のゴールに結びついた1本を除くと、ほとんどが相手GKやDFが無理な態勢に追い込まれることなくクリアされたり、枠をかすめて外に飛んだものだった。インドの守備的なプレーもあったが、なかなか得点を奪えなかった。

 この試合に限らず、日本のクロスボールはフィールドの浅いところから角度をもって斜めに入るものが多く、ゴールライン近くまで深く攻め入って上げるボールはそう多くはない。相手を崩す手法としてアーリークロスはいい選択肢のひとつではあるが、この試合でも全編を通して同じようなペース、同じようなタイミング、同じような角度で繰り出された。それでは、たとえ相手がFIFAランク118位のインドでも(日本は同18位)、比較的楽に対処できてしまう。

 その点で本当に相手を困らせたプレーとなると、小野のゴールを除けば、前半10分に長谷部の右サイドの突破からゴール前の巻へあげた、いわゆるマイナスの折り返しボールぐらいだった。

 試合中に自分たちで軌道修正できていれば、後半5点を生んだ猛攻と得点はもっと早くに始まっていたに違いない。

 ジーコ監督は久保+巻の高さのあるツートップゆえにチームがはまったアーリークロス依存だったと話し、「攻撃にバリエーションを付け加えたときに、彼らのよさがもっと出る」と指摘し、チームの対応力のアップを求めた。

 実際に、0−0の均衡を破った小野のゴールも、インドのクリアミスをつくものではあったが、小野がその直前のプレーでゴール前まで攻め上がっていた。指揮官の指摘するような、それまでの展開とは少し違うタイプのプレーの産物と言っていいだろう。

 得点に絡む場にいるという点では、巻、久保、佐藤はそれぞれのよさを出してFWとして“そこにいる”仕事をした。この日初先発した長谷部の積極的にスペースへ入るプレーと共に、評価と期待を抱かせるパフォーマンスだ。

 選手個々の良さはある。ある程度の攻撃パターンも持っている。だが問題は、それらをより効果的に生かす方法だろう。それは、試合中に考えをめぐらし、相手と試合の流れを見ながら、走りやパスのタイミングやテンポなどプレーに変化をつけて対応することでずいぶん変わってくるのではないだろうか。

 一つ上の攻撃へ、より怖さを備えた攻撃へ、W杯へ向けて、身につけたい部分だ。

 インドのほかにイエメン、サウジアラビアと対戦するアジアカップ予選はワールドカップ(W杯)後まで一休みとなり、日本代表は再びW杯へ向けた調整試合に戻る。

 次の相手はボスニア・ヘルツェゴビナ(2月28日、ドイツ・ドルトムント)。2月の4連戦の最後となるこの試合には欧州組が招集される予定だが、これまでの3戦とは違う顔ぶれのチームがどういう展開力をみせるのか。興味深い。

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