ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2006年 VSフィンランド 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2006/02/21 00:00

2006年 VSフィンランド<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 米国戦の経験は生かされていたようだ。

 日本代表は18日、静岡スタジアムでフィンランドと国際親善試合を行い、FW久保とMF小笠原の後半早々のゴールで2−0の勝利を収め、ワールドカップ・イヤーの2戦目で今シーズンの初白星を手にした。

 フィンランドはFIFAランク46位とはいえ、所属クラブの事情で主力選手を欠いたチームで、同ランク7位の米国とはレベルに明らかな開きがあった。

 そういう相手との戦いと米国とのパフォーマンスを単純に比較することは難しい。しかも、日本選手のコンディションは、徐々に上がってはいるものの、相変わらずベストとは言い難い。

 とはいえ、米国戦で懸念された守備は、チーム全体で相手にプレスをかけ、セカンドボールを追う姿勢が見られ、選手ひとりひとりに守備の意識が戻ってきた。これはプラスに違いない。

 「中盤で、狙いを持った守備ができていた」とジーコ監督も振り返った。

 ただ、縦に長いボールを放り込む攻撃が立ち上がりからしばらく続いたのは、中盤でミスしてピンチを作りたくないという思いと、早目に相手の裏を取って先制したいという狙いからか。それも米国戦の反省か。

 ラストパスの精度不足や、パスの出し手と受け手のタイミングの噛み合わせの問題などで、前半のチャンスらしいチャンスは41分にMF小野からMF加地へ繰り出されたサイドチェンジから生まれた場面ぐらいだった。だが、小野やDF中澤からの縦のロングフィードが次第に左右に振られるようになると、徐々に日本の攻撃にリズムが生まれた。特に右サイドが活性化され、それが後半早々の久保の先制点へつながった。

 スローインを受けた小笠原が右サイドを上がり、GKとDFの間を狙ったボールを流し込むと、久保がニアへ走りこんで左足を合わせてネットを揺らした。

 その9分後には、小笠原が自陣ハーフウェイ付近から相手GKの頭上を抜くロビングゴールを決め、4万人を超えたスタンドの観客から賞賛のどよめきを誘った。

 「相手の動きをよく見たすばらしいインテリジェンス」とジーコ監督も絶賛したプレーも、自分たちのリズムでプレーすることから引き出された余裕が生んだと言える。

 相手からプレッシャーを受けることはほとんどなく、その点でチェックすべき項目は残ったが、選手は調子を取り戻しつつある。中でも、“眠れる竜”の片目が開いたことは日本にとって朗報だろう。

 前回の3−6−1から3−5−2とシステムを変えてFWの枚数を増やしたことも奏功したのか、久保は米国戦よりも動きがよく、周囲との呼吸の合わせ方をつかみ掛けているように見えた。その兆しが、小笠原のボールに反応して決めた、619日ぶりとなるジャパン・ゴールだろう

 「彼は生まれながらの点取り屋。前の試合より動き出しや変化、ボールを引き出す動きはよく、後ろにいいオプションを与えてくれた。このまま自分の感覚をもっと取り戻してほしい」とジーコ監督も久保の復調を喜び、チームの状態にも、「前の試合よりも今日は内容もよく、気持ちも入っていた」と手ごたえを感じている。

 一方、各選手がW杯で対戦するオーストラリアを想定して、上背のある相手にどんなボールや攻撃が有効か、この試合からイメージは広がったこともプラス材料だろう。

 小笠原は、「背の高い相手には速いクロスが有効だし、ワン・ツーは3人目の動きを出していければいい」と話した。

 次の試合は22日のアジアカップ予選初戦となるインド戦(日産スタジアム)だ。

 「この時期はできるだけ多くの選手を使いたい」というジーコ監督は、再びメンバーとシステムを変更する模様だ。戦いとしては相手のレベルを考えると、チームの攻撃パターンと課題の決定力をチェックする機会になりそうだ。

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