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明暗を分けた最終節の闘い 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/05/22 00:00

明暗を分けた最終節の闘い<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 人間、ギリギリの時になると本性が現れるものだ。そんなことを連想させる試合がリーグ最終節で披露された。それも1つなんてもんじゃなくて2つ、3つ(え?まだ?)4つもである。チームの運命を左右するド派手な展開がテンコ盛り。これだからブンデスリーガは面白いのだ。

 まずはすでに優勝を決めていたバイエルンである。GKカーンとヒッツフェルト監督の引退試合はバイエルンが楽勝。ここまではシナリオ通りである。だが物語は別のところで用意されていた。チャンピオンズリーグ優勝でも泣かなかった59歳の名将がセレモニーで花束を贈呈されるなり人目も憚らず号泣、その場に立ちすくんでしまったのだ。豪腕で鳴るヘーネスGMも近くで貰い泣きを始める。過去に不倫騒動を起こした際、相手を泣かしても自分は冷や汗1つくらいしか流さなかった2人である。ということは「サッカーは恋愛に勝るということなのだろうか?」とも考えてしまった私である。

 涙といえば降格チームである。昨季のカップ王者で名門のニュルンベルクはホームにシャルケを迎えた。勝てば1部残留となる。しかし相手も勝てばCL自動出場権を得られる。ということでガチンコの真剣勝負になった。両チームのファンはこれまで“弱い者同士”的な友情で、この国では珍しくお互いに肩を組むほど親密な関係にあったのだが、こういうシチュエーションとなれば友情もへったくりもない。あるのは感情だけである。いや、勘定かな?(巧い! 座布団1枚!)

 結果はシャルケの勝ち。ブレーメンも勝利したため自動出場はならなかったが、とりあえずCLは予選から出場できる。ここで怒りを爆発させたのがニュルンベルクのファンだ。比較的上品と評判だった彼らは降格危機が叫ばれ始めるや次第に凶暴化、中指を立て喧嘩・放火・暴行を繰り返してきたのだが、この日はその集大成となった。その騒ぎっぷりはWWEプロレスも叶わないほどだった(らしい)。いや、真面目な話、殺人事件に発展しなかったのは不幸中の幸いである。

 「試合終了後のスタジアムに千切れた指、チェーンソー、無数のナイフが落ちていた」ほどシュールな環境に慣れていたシャルケファンもさすがに恐れをなしたようで、400人の警官に守られ、まさに逃げるがごとく家路を急いだのであった。

 3つめの試合だが、こちらは超お気楽モードだった。ハノーバー対コットブス戦である。どうして?と尋ねるのは野暮である。なにしろ、コットブスは前々節で1部残留を決めていたのだ。そのため最初からまったくヤル気なし。結果は0−4で惨敗。「でも、いいもんね。降格しないんだから♪」の声が聞こえるぞ!

 3月にバイエルンに2−0とマグレで勝って気分を良くした会長は「これからは1勝につき、1人80万円のボーナスを払う」と約束していた。現ナマの威力は絶大だった。なんと続く9試合を5勝1分3敗で消化、年間勝数の半分以上を稼いでしまったのだ。こうなると人間、気持ちが大きくなるものだ。「契約、あと1年延長する?」(会長)、「はい、喜んで」(監督)。わずか2分間の会話であった。ハンブルクは次の監督選びで177日も費やしたというのに、調子をコクと2分で済むのだ。

 最後はシュツットガルト対ビーレフェルト戦だ。こちらもCLと1部残留がかかっていた。結果は引き分け。他力本願ながらビーレフェルトは残留を決めて万々歳だが、シュツットガルトは下位2チームに勝点で抜かれ、来季はCLともUEFAカップとも無縁の6位に沈んだ。昨季のリーグ王者は来季、“ただの人”になるのだ。

 こういうわけでチームの明暗がクッキリと分かれたわけだが、選手よりもホッとしているのは何といっても監督であろう。例えばUEFAカップ出場を決めたボルフスブルクのマガートである。彼の年俸は4億8000万円と、この国では2番目の高額である。VW社丸抱えのクラブは欧州カップ戦に常時出場のノルマを親会社から課せられている。ここで簡単にコケるわけにはいかないのだ。ハンブルクのヨル新監督も同じ気持ちのはず。前任者の倍の年俸(こちらも4億8000万円)を貰うのだから、なんとしても来季は国際舞台で指導力を示したかっただろう。

 最後にもう一度おさらいをする。

 今季のガッカリ組=ニュルンベルク、シュツットガルト

 喜び組(将軍サマとは無関係ですよ♪)=コットブス、ボルフスブルク、ビーレフェルト

 ところで、マガートを「2番目の高給取り」と紹介したけど、気になる1番って誰? 正解は来季からバイエルンを指揮するクリンスマンである。その金額を聞いた瞬間、私は頭がクラクラした。年俸約1,300,000,000円というのだからね!

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