ベースボール・ダンディBACK NUMBER
国母“腰パン”騒動で考えた、
プロ野球におけるカッコ良さって?
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byToshiya Kondo
posted2010/02/23 10:30
鈴木健と佐々岡真司の引退試合でとった行動の是非。
'07年の鈴木健(ヤクルト)の引退試合、最後の打席。
鈴木健の打った平凡なファールフライを、村田は捕球しなかった。わざとアウトにしなかった。この後、鈴木健はヒットを打ち、プロ生活最後の打席を飾る。
これは正しかったのか? 正しくなかったのか?
正しくはなかったかもしれないけど、拍手をしたい気持ちになった。ちょっとだけカッコよかった。
同年、佐々岡真司(広島)の地元引退試合。
村田は佐々岡に花を持たせることはせず、ホームランを打った。村田には本塁打王のタイトルがかかっていた。そして試合後、佐々岡に打ったことを謝罪した。
これは正しかったのか? 正しくなかったのか?
謝る必要はなかったようにも思うが、正しかったと思いたい。投手の最後の登板に対して真剣勝負で礼を尽くすことは、おきて破りではないはずだし、打者の最後のファールを捕球しない行為とは意味が違う。
本塁打王争い大詰めでの故意の三振はダンディズムゆえか。
同年、対ヤクルトのペナント最終戦。村田はガイエルと本塁打王を争っていた。
横浜はガイエルとの勝負を避け、第1打席から四球にする。これに対して村田は、打席でまったく打つ気を見せず、わざと三振する(わざとかどうか、村田は言葉にしていないが、見ればわかる)。自軍がライバルに勝負しないなら、自分も打つことはできない……そんな礼儀か、抗議か、打つ気を見せなかった。
この日、村田は4打席4三振。ガイエルは4打席2四球。村田が1本差で本塁打王に輝く。
これは正しかったのか? 正しくなかったのか?
正しくはなかったかもしれないけど、カッコよかったと思う。この三振のダンディズムに比べれば、ヘアスタイルなど、たいした問題じゃない。
野球ファンにはもっと上から物を言う権利がある!
腰パンの国母和宏を叩く意見に「税金が使われているんだから」という理由があった。
JOC(日本オリンピック委員会)に費やされている国庫補助金は年間25~27億円程度である。国民1人あたりにすれば20円ちょっと。
20円の出資でそれだけ物を言う権利があるならば、1試合2000~4000円のチケットを買っている野球ファンは、好きで買ってるとはいえ、その百倍、上から物を言っても許されるはずだ。あくまで金額上の話だが……。
プロ野球における正しさ、カッコよさとは何か。それを個々があらためて定義してみるのも悪くない。