佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
Round 13 ハンガリーGP
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta
posted2004/08/23 00:00
今季4回目の予選トップ3のポジションからスタートしてフィニッシュは6位。序盤からエンジンのオイルポンプにトラブルが発生、だましだましの6位入賞は佐藤琢磨本人が言うように「つらいレースでの貴重なポイント」ではあるのだが、3位ポジションを守れなかったか……という思いも残る。
シューマッハーを前に置いてのスタートは「最悪じゃなかったけどよくはない」もの。真後ろにいたアロンソが右に飛んで琢磨のインを奪う。今回のレースのキーはここだったと見る。
「アロンソは警戒していたし、ボクも動いたんだけど前に出られてしまった……」
後の1コーナーで「アウトからかぶせた時に(レーシング)ラインからはずれて……」
タイヤがゴミとホコリを拾ってしまった。こうなるとタイヤがグリップを失い、トラクション(牽引力)がかからなくなってしまう。
2コーナー過ぎでモントーヤに、下りストレートでバトンに、4コーナーの進入でトゥルーリに、脱出でライコネンに次々とパスされ、オープニングラップで3位から8位に転落。そこからの追い上げはペースよく、ライコネン脱落の後トゥルーリをかわして6位と挽回したが、仮にオープニングラップを4位で戻って来たらどうだったろう?
「それはいますぐには分からない、ラップチャートなどをジックリ検討してみないと」とレース後の琢磨。
結果論は承知で言うなら、1コーナーに至るまでの琢磨とアロンソのアプローチの違いがハンガリーGPの明と暗を分けた。おそらく1コーナーでの琢磨の現実的ベストポジションはバリチェロを食ってシューマッハーに次ぐ2番手に上がるというものだったろう。いっぽうアロンソは琢磨を食おうと思っていた。フェラーリ2台は最初から眼中にないのである。琢磨もそんなアロンソのもくろみを把握していたことは上記のコメントで分かるのだが、スタートダッシュでBARホンダは(だけではないが)ルノーに敵わない。これがそもそもの敗因である。
HRDの中本修平エンジニアリング・ディレクターはレース後こう語っている。
「スタートの最初の数メーターのコロコロッっていうところがルノーは速いんですよ。そこで車速が1?/h違うと100メーター先では10メーターの差になってしまう」
この違いはスタート・システムの違いによって発生するという。ホンダもモナコまでは優れたダッシュを誇ったが、FIAからそのシステムを禁じられてから精彩を欠いた。そしてその後開発は進んでいない。
佐藤琢磨を3位以上に押し上げるにはこのスタート・システムの開発が急務だと思うのだが、8月29日の次戦ベルギーGPが終るまでは長いテスト禁止期間中。琢磨の真の活躍は夏休みが完全に明けてからとなる。それが今から待ち遠しいのである。