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トヨタが見せる高い完成度。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph bySutton Motorsport Images/AFLO
posted2009/02/24 00:00
F1開幕戦オーストラリア・グランプリ(3月29日)まであと1カ月。スペインのヘレスやバーレーンで新車を使っての本格的オフテストが繰り返され、2月中旬にはレッドブルもいよいよ新車を発表。これで、まだ新車を披露していないのはトロロッソ、HRF1、フォースインディアの3チームのみとなったが、トロロッソは“本家”レッドブルのクローンをモディファイしてリリースすると思われ、登場は時間の問題。主要チームの臨戦態勢はほぼ整ったと見ていいだろう。
2月のテストはマクラーレン、レッドブル、トロロッソ、ウィリアムズ、ルノーが参加したヘレス組と、フェラーリ、BMW、トヨタが顔を合わせたバーレーン組とに分かれたが、バーレーンで俄然注目を浴びたのがトヨタである。
バーレーン組は2月10~13日、翌週の16~19日と短期集中的にトレーニングを行なったのだが、テスト2クール目のトヨタはヤルノ・トゥルーリが初日に2レース分に当たる141周(750km)、2日目には149周を消化し、いずれもノントラブルで終了。TF109の高い信頼性を見せつけた。
「自分のキャリアの中で1日でこんなに走ったのは初めての経験」と、ベテランのトゥルーリはコメント。
3日目にはトゥルーリからステアリングを譲られたティモ・グロックが搭乗。トゥルーリによってセットアップができていたこともあろうが、順調に132周を走破したばかりか、他2チームをしのぐ1分32秒492のトップタイムを記録。最終日は油圧系トラブルの発生で65周しか走れなかったものの、ライバルに速さと強さを見せつけてバーレーンテストを成功裡に打ち上げたのだった。
このトヨタのパフォーマンスに仰天したのはフェラーリで、ライコネンは「早くトヨタに追いつかなければ」と語ったと伝えられる。それにしてもこのトヨタの速さはどこから来ているのか?
ひとつはTF109のベースとなった’08年マシンの優秀性。いくらレギュレーションが激変したとはいえ、前年悪かったマシンが翌年好走する例は少ない。次に開発スピードの速さを挙げたい。トヨタの新車発表は1月15日と、フェラーリに次ぐ2番目の早さだったが、昨年中にはすでに実走可能な新車が完成していたとの見方もある。その開発のリードタイムを活かしてテストのたびに進化を続け、それがバーレーンでベンチマークのフェラーリから逆に目標視される好走につながったのだ。
今年はレギュレーションでシーズン中のテストが禁止されている。であれば、シーズン突入前にどれだけマシンのレベルを高められるかが死命を決する。そこを早くから読み込んだトヨタの開発戦略の成功がいま、ライバル勢を慌てさせているのだ。いまのこのトヨタの先行ぶりにライバルたちが肩を並べるのは容易なことではない。追いついたと思ったら、トヨタは一歩先のアップデートキットを投入していて、さらに一歩先を疾駆しているからである。
また、序盤戦に最も必要なマシンの信頼性は、オフテストでいかに走り込めるかにある。そういう意味でレッドブルのように新車が“後出し”になったところは、相手に手の内をみせないという点では有利ながら、走り込み不足からトラブル発生のリスクを抱えているともいえる。
3月に入るとへレス、バルセロナで合同テストが行なわれる。高い完成度を誇るトヨタがマクラーレンやルノーと合間見えた時、どんな衝撃を見せてくれるのか。初優勝に向けて、トヨタの最後のオフテストに注目したい。