スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
浅田真央は会場を「制圧」していた!!
幻となった、完璧な『鐘』の得点。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2010/02/27 08:00
「完璧な演技」だけではなく「難易度」にもより高評価を!
採点が大きく変わったのは2002年のソルトレイクシティ・オリンピックでペアの採点に不正があったためだが、当時の映像を見ると、技術点と芸術点の2項目を6点満点で採点するのは、あまりに大雑把すぎるように思える。これでは主観が大きく入る採点にならざるを得ないから、不正が介入する余地があった。
それよりは現状の採点システムの方がはるかに進化したと言っていい。
ただし、バンクーバー・オリンピックを見る限り、地元カナダの選手に対しては総体的に得点が「インフレ」気味という印象を持った。現在の採点システムも万能ではなく、地元が有利であるとか、そうした科学的でない要素が入ってくる可能性は否定できないということだ。
それだけでなく、フィギュアの将来に関わる大きな課題もいくつか浮き彫りにされた。
これからも、ジャンプはあえてダウングレードして、完璧な演技を披露する選手を評価するのか?
「世界で初めて」にチャレンジし、それを見事成功させた選手に、もっと評価するシステムは構築できないのか?
審判、ルールが次の時代の流れを作る。
どんな競技にしても、採点システムが競技の流行を作るということを忘れてはならない。
たとえばモーグル。
今回のオリンピックの印象では、結果的には果敢に急斜面に突っ込んでいく選手の評価が高かった。アグレッシブに高得点を狙っていきたいと思うならば、その滑りは必要条件となるわけだ。
それはオリンピックで採点にあたった審判からのメッセージである。
フィギュアに関して言えば、現在の採点システムになってからまだ日が浅い。今回のオリンピックで見えてきた課題が今後、どう解決されていくのだろうか。
より多く、深く議論されることを祈らざるを得ない。
2010年2月25日、バンクーバー・オリンピックでキム・ヨナがマークした「150.06」は、現状の採点システムでの模範解答なのである。
採点の基準が変われば、評価も変わっていく。
それにしても、何度も書いて申し訳ないが、完璧な『鐘』には、どれくらいのスコアが出たのか?
それが知りたかった。
浅田真央の『鐘』は、あと2分を残して幻に終わった。