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今年一番の注目株はレイズにあり。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/02/24 00:00

今年一番の注目株はレイズにあり。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 2月中旬にフロリダに移動し、連日キャンプ取材に明け暮れる忙しい日々を過ごしている。そんな中、どうしても本題を進める前に、どうしても報告したいことがある。前々回、WBCにおける日米の温度差について取り上げたが、どうやら各メジャー球団の冷ややかさとは裏腹に、参加する選手たちの意識は確実に変化しているのだ。

 取材の合間、WBCの各国代表の1次候補に名を連ねている選手たちから、それとなく話を聞いてきたのだが、彼らのWBCに対する意気込みが前回とは比較にならないほど高いのだ。第1回大会では通常のキャンプでも調整だけで本番に臨んだ選手ばかりだったが、今回、出場に前向きな選手たちは、早い時期から自主トレを続け、コンディショングをほぼ万全に整えてキャンプ地に乗り込んできている。また逆に、第1次候補に入っていながら調整が遅れている選手の中には「出場は五分五分。代表チームに迷惑をかけたくない」と答えたりもしてくれた。

 これらの選手たちの言動はいうまでもなく、彼らの中にWBCに勝ちたいという明確な目的意識が芽生えたからだ。アスリートである限り、“勝利”という2文字ほど至上の喜びを与えてくれるものはない。前回大会で戦う準備をしてきた日本、韓国、キューバの代表チームが上位を独占したことで、他国代表チームの選手たちのモチベーションを当然のごとく高めてくれたようだ。将来WBCが真の国際大会に発展することを願う自分にとって、この選手たちの意識変化は間違いなく大きな前進と捉えている。

 さて、本題に移ろう。次回以降シーズン開幕まで何かとWBC関連の話題を取り上げることになりそうなので、個人的に今シーズンの活躍を期待している選手を早めに紹介しておこうと思う。昨年のプレーオフの活躍で、岩村明憲選手から「化けもの」とまで言わしめた、レイズのデビッド・プライス投手だ。

 もちろん彼の才能を疑うものはいないはずだ。昨年のレッドソックスとのリーグ優勝決定シリーズで、そこまでプレーオフ登板未経験の新人プライス投手が、第2戦では延長11回一死一塁のピンチをしのぎサヨナラ勝ちをお膳立てし、さらに第7戦では8回表二死満塁から登板し、2点差を守り切ってセーブを挙げている。圧倒的な投球を今なお鮮明に記憶されている方も多いのではないだろうか。

 彼の存在を知ったのは、昨シーズン後半にレイズ担当を任され、チームに帯同したばかりのときだった。試合前の監督会見で、番記者たちからその当時マイナーリーグにいたプライス投手の質問が何度となく繰り返されたことで興味を持ち始め、番記者に尋ねたのがきっかけだった。

 2007年のドラフトで、レイズが全体の1位で指名した若干23歳の超有望左腕投手で、プロ1年目となった昨シーズンは1Aから始動し、4勝0敗、防御率1.82の成績を残し2Aに昇格。さらに2Aでも7勝0敗、防御率1.89と抜群の成績で、この時期3Aに昇格したばかりだった。そして番記者たちの関心事は、プライス投手のメジャー昇格の可能性だった。そんな彼らの期待に応えるかのように、ロースター枠拡大後の9月13日、メジャー昇格を果たした。その翌日にいろいろ話を聞こうと1対1のインタビューを敢行したのだが、その際にある程度“器の違い”を感じ取っていた。

「ドラフト1位指名だったし、マイナーでは自分が投げるたびにファンから完全試合を期待されていた。プレッシャー?特別感じたことはなかったよ」

 さらに3Aで成績が芳しくなかった(1勝1敗、防御率4.50)ことに触れると、造作もなく以下のように答えてくれた。

「レベルの違いが原因ではないよ。ちょうどあの時期自分の投球ができていなかった。それだけのことさ。もちろんメジャーでも自分の投球さえできれば成功する自信はある」

 これらの強気とも思える発言が、結局は嘘ではなかったことが前述の活躍で判明することになったわけだ。198センチの長身から繰り出す150キロを超える直球と高速スライダーは、全盛期のランディー・ジョンソン投手を彷彿させる。現時点でもメジャーで十分通用する投手だと思うが、果たして彼の中にどれ程の“伸びしろ”があるのか注目されるところだ。結局昨シーズンはメジャーで1試合しか先発できなかったので、まだ先発投手としての力量も定まってはいない。

 だが最近のレイズ関連のニュースをチェックしてみると、現時点でプライス投手の開幕メジャーは確定していないようだ(多少他の選手の契約問題も絡んでいるようだが……)。レイズは昨シーズンも、新人王に輝いたロンゴリア選手を、キャンプ中の成長過程を考慮し開幕当初はマイナーリーグに回す決断を下している。ロンゴリア選手同様、レイズに黄金期を築けるかどうかカギを握る選手だけに、レイズは彼の才能を開花させるまで慌てることはしないだろう。

 いずれにしても遅かれ早かれ、今シーズン中にプライス投手がメジャーのマウンドに立つのは間違いところだろう。その時にどんな投球を披露してくるのか楽しみに待っていようと思う。

タンパベイ・レイズ

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