MLB Column from WestBACK NUMBER
理論に裏打ちされた、城島の活躍。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAFLO
posted2006/07/04 00:00
開幕当初は低迷を続けていたマリナーズが、ここに来て上昇傾向を続け、レンジャーズ、アスレチックスとともに地区首位争いに絡み始めた。好調の主要因はもちろんイチロー選手だろう。例年通りのことだが、打率低迷した4月が嘘のように5月以降は打ちまくり、 18試合に続き、20試合連続安打を記録。連続安打でア・リーグの1、2位を独占している。打線も何とかつながり始め、出塁したイチロー選手を生還させる確率が高くなってきたのは間違いない。
そして、もう1人忘れてならないのが城島健司捕手の存在だ。イチロー選手が「やりすぎでしょ」と評したようだが、日本人メジャー選手初の2試合連続2本塁打を放つなど、6月下旬から明らかに打撃が上向いている。開幕直前に個人的な今季の注目すべき話題の1つとして、日本人初のメジャー捕手のプレーぶりを挙げたが、ここまでの活躍は多くの人たちの予想を上回るものだろう。
確かに開幕当初から城島選手の打撃センスに首脳陣は高評価を下していた。
「ジョージマは強くて素早い腕の使い方をしている。そのためヤンキースのマツイよりもコンパクトなスイングができている」
ペントランド打撃コーチが説明するように、無駄のない素早いスイングができることで、ボールをギリギリまで見極めることができる。現在“動くボール”が主流のメジャー球界では、最も理想的な打撃スイングとされるものだ。以前に田口選手から聞いた話なのだが、日本人選手が学んできた打撃フォームでは対応できず、適応するのに時間を要するということだった。確かにMVPと新人王をダブル受賞したイチロー選手の1年目も、安打は量産したもののボテボテの内野ゴロが相当数あったのを記憶しているだろう。それが城島選手は早くも的確にボールを遠くへ飛ばす打撃が完成しつつあるように思われる。その理由は前述した打撃センスもさることながら、もう1つ重要なことは捕手という特殊性もあるのではないか。
「もちろん次にどんな球を待とうかと考えるときは、捕手としての要素も使ったりしますよ」
この間マリナーズの取材に回ったときに目撃したのだが、城島選手は毎試合後にその日起こった出来事をメモにまとめるなど、熱心に研究を続けている。他の選手以上に持っている試合に対する洞察力が、相手投手の投球の組み立てを読み取ることにも大いに反映されているようだ。それを物語るように、ほぼ全チームと一通り対戦を終えた今の時期に打撃が再び好調になった。城島選手に相手チーム、相手投手のデータがインプットされたからだろう。
「捕手は面白いですよ。選手の中で1人だけ反対方向を向いているでしょ。やっぱり特別だという優越感がありますね」