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石川遼、静かな優勝シーンの理由。
~感謝と敬意の勝利を知った時~ 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byKYODO

posted2009/07/10 11:00

石川遼、静かな優勝シーンの理由。~感謝と敬意の勝利を知った時~<Number Web> photograph by KYODO

「あれ? どうやってガッツポーズしたらいいんだっけ」

 石川遼は思っていたよりもずっと静かな気持ちで優勝の瞬間を迎えていた。

 6月のミズノオープンよみうりクラシックで今季初優勝を飾り、16日から始まる全英オープンの出場権も獲得した。ウイニングパットを沈めた石川は派手に泣きじゃくることも、拳を振り上げることもなく、どこかよそよそしい感じで空を仰ぎ見てゆっくり両拳を握りしめた。

 グリーンを下りるとコースに向き直り、もう一度小さなガッツポーズ。

「コースに勝てたなという気持ちと僕のゴルフを受け入れてくれたコースに感謝と敬意を表したかったんです。最後はもう少し気合のこもったガッツポーズをしたかったなあというのはありましたね」

 ラストシーンを笑いながら振り返り、これまでの2度の優勝で見せたような涙は最後まで見られなかった。

恩人を続けて亡くした石川は、優勝の思いを天国へ届けたかった。

 2OBによる9打の大叩きや優勝を決定づける幸運なチップインイーグル、山あり谷ありのラウンドが、ラストシーンに解き放つだけの感情を削り取ってしまっていたのだろうか。しかし、しびれる試合展開ということなら、過去2勝もなんら変わりはなかった。17歳にしてすでにツアー3勝。優勝の感激にもう慣れてしまったのか。

 石川は自らの心情をこう説明する。

「去年JGTOの島田さん(前会長)が亡くなって、今年に入ってからも中学の時の恩師と、お世話になった高校の関係者の方が亡くなった。すごく支えてくれた人たちを続けて失ったんです。中学の担任の先生はまだすごく若くて、いつも応援してくれた人だったので最後は僕の優勝が届いたらいいなと思いましたね」

 3人はいずれも石川のゴルファーとしての活動を支援して応援してくれた人物だった。

 勝ちたい。勝ってうれしい。それは自分だけの感情だ。達成した瞬間には無意識のうちに涙や力強いガッツポーズが出るだろう。

 しかし、この優勝が誰かに届いてほしいと願うのは自分だけでは完結しない思いだ。故人となればなおさら確かめる術もない。本人も戸惑ったほどの静かな優勝シーンの理由は、自分だけの喜びに満足しなくなった石川の心持ちの「変化」であり「成長」だったのかもしれない。

ただのメジャー挑戦じゃない。夢と恩返しが石川の肩にかかる。

 この優勝により全英オープンの出場権も勝ち取り、今月16日からは4月のマスターズに続く大舞台に挑む。メジャー出場はまだ2度目で日本での優勝回数よりも少ない。

「雰囲気を味わったことがあるという意味では初めての時とは違う。だけど自分にとってメジャーが遠いものであることに変わりはない。タイガー(・ウッズ)をはじめ、ワールドクラスの選手が出てくるものすごいトーナメントだし、すごく興奮すると思う」

 こればかりは日本ツアーでの戦いとは違う。メジャーの舞台は石川にとって未知の世界。まだ誰かのために戦うような余裕もない。自らの夢やあこがれを追いかけながら、喜びや驚き、落胆を素直に感じて糧とするだけである。

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