杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
Jリーグのレベル後退を危惧する。
~アジア内ランキングの必要性~
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2009/11/16 10:29
11月7日に行なわれたACL決勝戦では、浦項が2-1でアルイテハドを破り優勝。決勝点を挙げたノ・ビュンジュンに川淵名誉会長から大会MVPのトロフィーが手渡された
Jリーグのレベルを示す客観的データはないが……。
かたやアジアに、リーグランキングはない。Jリーグのレベルは、浮き彫りになりにくい。僕自身はここ1、2年で、Jリーグのレベルは、大幅にダウンしたと考えているが、それはあくまで感覚的なもの。それを客観的に示すデータがない。今回の不成績や、Jリーグそのもののレベルを危惧する声があまり聞かれないのは、そうした理由も大きいだろう。
うっかりしていると、レベルはどんどん下がっていく。実際、その傾向はすでにある。優れた外国人選手は、ここ1、2年で急速にいなくなった。フランサ、ポンテ級の選手が、欧州からやってくる可能性は低い。Jリーグで活躍すれば、逆にカタールなどのクラブに持っていかれてしまう。
その昔、Jリーグが開幕して何年かした頃、ロベルト・カルロスは僕にこう言ったものだ。「Jリーグは選択肢の4、5番目にある」と。つまり、世界で4、5番手に位置するリーグだと彼は捉えていた。スペイン、イングランド、イタリア、ドイツの次あたりだと言ったわけだ。
当時のJリーグには、現役のブラジル代表がごろごろいた。リネカーも、カレカも、スキラッチもいた。ストイコビッチもストイチコフもいた。名古屋グランパスのファンでなくても、ストイコビッチのプレーに目を凝らしたし、必然、テレビの視聴率は高水準を維持していた。軽く今の倍はあったはずだ。
郷土愛に包まれるJリーグはコップのなかでの争い?
とはいえ、現在のJリーグが盛り上がっていないわけではない。各会場に行けば、むしろ予想を超える熱気に満ちている。“おらがチーム”に対する熱は、以前より高まっていて、ローカル色、言い換えれば、局地的な郷土愛は、いっそう濃いものになっている。Jリーグのレベルを心配する暇などなさそうなほど、当事者は一生懸命に声をからしている。
鹿島アントラーズが勝つか、川崎フロンターレが勝つか、あるいはガンバ大阪が追い込むか。Jリーグは今、優勝争いが白熱しているが、僕にはそれが小さなコップのなかでの争いに見えて仕方がない。
世界との接点は、もっぱら代表チームに向けられている。それとこれは、完全に切り離されて考えられているが、リーグのレベルが低い国の代表チームが、ワールドカップ本大会で旋風を巻き起こす絵は、想像しにくい。
Jリーグの没落は日本代表の低迷につながる。
スペイン代表はなぜ今強いか。ブックメーカーが2010年ワールドカップの優勝候補になぜ推しているのか。それはリーガ・エスパニョーラの、現在のレベルと密接な関係がある。リーグの勢い、つまり国の勢いが、代表チームを後押ししている典型的な例である。
Jリーグは、日本代表を後押ししているとは言い難い。Jリーグのレベルを心配する声こそ、今の日本には必要だろう。Jリーグのレベルの後退が、今後の日本代表の足を引っ張るような気がして、僕は仕方がない。