青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER

成長期の石川遼を悩ませる、
急激に速くなったヘッドスピード。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/06/24 11:00

成長期の石川遼を悩ませる、急激に速くなったヘッドスピード。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 石川遼が追いかけるのは秒速2mの差で先を行く自分自身である。

 7月の全英オープン出場権を懸けたミズノオープンよみうりクラシックが25日に開幕する。上位4人に与えられるメジャー切符獲得のカギは、石川にとっては回転する体とその先を行くヘッドスピードとのギャップを埋められるかどうかにあると言っていいだろう。

 2週間前の日本プロ選手権、石川は6オーバーの83位に沈んで予選落ちした。原因はフックボールを乱発したドライバーショットにあった。ミスが止まらなかった石川は珍しくショックをあらわにしていた。

「体の回転が遅くてヘッドスピードについていけなかった。これまでは右へのプッシュアウトが多かったのに、今じゃ簡単にフックが出るようになっている」

 ショットの曲がる要因は千差万別。ただし、スイング中の体と腕の関係に限って簡略的に説明することはできる。インパクトまでに腕が先行しすぎれば左にフックし、体が先に開いてしまえば右にスライスする。石川の現状は前者である。

フック乱発の要因は急激なヘッドスピード向上にあり!?

 日本プロのさらに1週間前、日本ツアー選手権で計測された石川のヘッドスピードは4日間平均で秒速52.3mだった。今季開幕前は秒速50mだったというから、かなり変化しているのが分かる(ちなみにタイガー・ウッズは07年平均データで秒速55.6m)。

 昨年から続けてきた肉体強化が実を結んできたこと、スイングの型が固まってきてクラブを振り切れていることがスピードアップにつながっているようだ。飛距離を生み出すヘッドスピードの向上は歓迎すべきことだが、今は遠心力を増したクラブヘッドに振り回されるように手が先行してしまい体が置いていかれる……だから左に曲がる。

 石川のミスといえば昨年までは右方向へのミスが多かっただけに、本人の中にもかなり違和感があったようだ。

「こんなに左にボールが曲がったのは中2の頃以来だと思う。あの時は背が伸び続けたことでボールと目の距離が合わなくてひどいミスが続いてた」

 中学2年生の石川は成長期で1年のうちに14cmも身長が伸びた。大きな肉体的変化はショットにも影響した。ここ1年間の石川は身長こそ変わらないが、60kg台前半だった体重が70kg台まで増えた。当時とは違った意味で肉体は大きく変化した。

今の低迷は「第3次成長期」。石川遼は生まれ変わる!

 初めてクラブを握った6歳の頃を第1次、子どもから大人へと変わる時期だった14歳の頃を第2次成長期だったとすれば、現在はアマチュアからアスリートの体へと脱皮していく第3次成長期といえるのかもしれない。

「今はリズムとタイミングが自分の求めるスイングとマッチしていない。ここまで同じフックが出るのは久しぶり。もう1度やり直しというか、一から見つめ直して練習していかないと」

 試合のない1週間で必死にクラブを振りつづけた効果を実戦ですぐに発揮できるだろうか。秒速2mのズレを埋めることができれば、そのドライバーショットは今までよりももっと遠くへ、真っ直ぐに飛んでいくはずである。

石川遼

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