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日本野球、豊穣の予感。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byTakashi Shimizu

posted2006/12/25 00:00

日本野球、豊穣の予感。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

 大学生&社会人ドラフトが行われた翌11月22日、社会人野球の日本選手権を見るため大阪に向かった。この大会でよかった選手は下敷領悠太(投手・日本生命)、山本隆之(投手・松下電器)、鬼崎裕司(遊撃手・富士重工業)、倉重友二(捕手・大阪ガス)、田澤純一(投手・新日本石油)、服部泰卓(投手・トヨタ自動車)、佐竹功年(投手・トヨタ自動車)、福田康一(遊撃手・トヨタ自動車)などで、鬼崎、田澤については雑誌『アマチュア野球10号』(日刊スポーツ出版社)にプレーぶりを詳しく書いたので、興味のある方は読んでいただきたい。ここで紹介するのは社会人ではなく、中学生である。

 11月25日、甲子園球場に行き「第2回タイガースカップ」を見た。副題に「2006 少年野球・関西No.1決定戦」とあるように、優勝を争うのは近畿2府4県から選りすぐられたシニアリーグ、ボーイズリーグ、ヤングリーグの10チーム。出場する選手は新チームの1、2年生だけなので、さぞかし未完成で非力なのだろうと思っていたら、どうしてどうして、その力強さに圧倒されてしまった。

 武内晋一(ヤクルト内野手)の出身チーム「神戸須磨クラブ」には井村展章(捕手)、八代和真(右翼手)、藤原健次(左翼手)という好素材が揃い、井村の二塁送球タイムは2.12〜2.15秒(イニング間)、八代の打者走者としての一塁到達は何と二塁ゴロ4.15秒、遊撃ゴロ4.18秒という、プロレベルでも速い数値で驚かされた(交野リトルシニア戦)。

 第3打席ではセーフティバントがファールになったが、このときの一塁到達が3.74秒。余りにも速すぎるので操作ミスの可能性が高いが、それでも0.2秒以上誤ることはないので、3秒台を計測したのは間違いない。

 第2試合に登場した富田林リトルシニアの先発投手は勧野甲輝(右投・右打・182/85)。バックネット裏に関西有名高校の監督がずらり勢揃いしているので聞いてみると、例外なく目当てはこの勧野だという。中学2年生でも、入学してもらうためには今から試合を見にこなければならないのだろう。

 球速は134、5キロ出ていたというから、僕がこれまで見た中学2年生の中では圧倒的に速い。7回完投で奪三振が4つだから、課題はストレートと変化球のキレということになる。それにしても中学2年生にして182センチ、85キロとは。

 第3戦に出場したジュニアホークスボーイズは、弱い南海ホークス時代の緑を基調としたユニホームを彷彿とさせて懐かしかった。目についた選手は安田紘規(遊撃手・右投右打)と広瀬直人(捕手・右投右打)。安田は軽快なフィールディング、広瀬は二塁送球2.06〜2.16秒の強肩がひときわ目立った。

 関西の中学生は特別なのかもしれないが、日本野球の裾野は充実していると又しても思った。松坂大輔がメジャー入りすることになり、日本の野球が空洞化すると悲観論が飛び交っているが、彼らには中学、高校野球をネット裏から数十試合見てくれ、と言いたい。

 高校野球に目を移せば、飛距離170mの大ホームランを放った中田翔(大阪桐蔭高)がいて、来春早大のユニホームを着て、神宮球場のマウンドに立つであろう斎藤佑樹は、この中田を夏の甲子園大会で3三振に斬って捨てた実力派にしてアイドル以上に大騒ぎされる人気者。

 メジャーリーグで日本人選手が今以上に大活躍し、日本国内で若くてイキのいい選手がプロやアマで溌剌としたプレーを見せれば、日本野球は二重構造と言ってもいい奥行きを有することになるのではないか。今言われている危機は、実は大いなるチャンスであると僕は思っている。

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