今こそモータースポーツBACK NUMBER

F1富士GPへの期待と課題 

text by

西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

PROFILE

photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2005/11/24 00:00

F1富士GPへの期待と課題<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 11月13日の日曜日、実に数年ぶりに富士スピードウェイに行って来た。トヨタ・モータースポーツ・フェスティバルが開かれ、そこでTMGの高橋敬三・技術コーディネーション担当ディレクターに、来季の話をうかがうという取材である。ちなみに同氏は今季いっぱいでその職を離れ、年末には日本に戻ってこられる。

 恥ずかしいことを言うようだが、実はリニューアルされた富士を訪れるのは今回が初めて。東ゲート(かつての裏ゲート)をくぐった瞬間にその大変貌ぶりにビックリ。プレスの駐車場にたどりつくまでに2回も警備員さんに道を訪ねるなど、とんだオノボリさん(浦島太郎か)ぶりを発揮してしまった。

 ようやくプレスルームに上がって、ビッシリと埋まったスタンドにこれまた仰天。関係者にうかがうと「昨年の入場者は1万4000人でしたが、今年は2万人を越すかもしれませんね」ということだったが、翌日聞いたところでは「約3万200人だった」とか。トヨタ・ファンの多さをあらためて実感した次第である。

 朝8時から始まったイベントは夕方4時30分まで盛り沢山。ヴィッツ、アルテッツァ、フォーミュラ・トヨタの3シリーズ最終戦あり、伝説のトヨタ・ターボ7をはじめとするヒストリックカーのデモランあり、生まれて初めて見る驚天動地のドリフトエクストリーム(D1)ありと飽きない内容だったが、筆者がいちばん印象的だったのはヤルノ・トゥルーリがドライブするトヨタTF105が単独走行した時。

 ピットレーンで見ていたのだが、ストレートに甲高いエクゾーストノートを残してマシンが疾駆した数秒後「ウォ〜」とも「ウ〜ン」ともつかぬ感嘆の声が伝わって来た。F1の圧倒的パフォーマンスに素直に陶酔するファンがなんだか嬉しかったのだ。その声のウェーブを聞いて、早くここ富士でF1が開催されないかなとも、その時切実に感じた。ストレートの長さは実に1.5km。そこを20台以上のF1マシンがスリップストリームを使い合いながら一本の蛇のようにウネウネと走り抜ける様はさぞかしスペクタクルだろうし、エキゾーストノートの音圧も圧倒的だろう。

 ただ、富士でF1を開催するにはいくつかの難問が控えている。サーキット設備はすばらしいが、交通アクセスや宿泊施設などのインフラが問題になって来る。事実、筆者は午前10時過ぎに東名御殿場ICを降りたのだが、出口渋滞2km(東京を出る時の情報は4km)だった。IC近くに人気アウトレット・モールがあり、また箱根観光への玄関とあっては当然だろう。このあたりの解決策を見つけることがすなわち、富士F1開催の最後の要件である。

 それにしても11月の休日にモータースポーツ漬けの1日を送るのはなんとも気持ちがいいものだった。11月23日にはホンダが「ツインリンクもてぎ」で、12月4日はニスモが富士スピードウェイで同様のモータースポーツ・ファン・サービスを企画している。オンシーズンにレースを見られなかったファンにお薦めしたい。

モータースポーツの前後の記事

ページトップ