岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER

キリンチャレンジカップ2008 VS.ウルグアイ 

text by

木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2008/08/25 00:00

キリンチャレンジカップ2008 VS.ウルグアイ<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 前半を0−0で終えてロッカールームに引き揚げる日本選手の厳しい表情が、この試合と自分たちの置かれた状況をよく物語っていた。

 親善試合とはいえ、日本同様に来月6日に迫るワールドカップ(W杯)予選の準備として、ウルグアイは欧州リーグ在籍選手を多用して本気モード全開で戦った。そのおかげで、1−3という結果以上に、日本選手とチームの問題点が改めて浮き彫りになったと言える。

 試合開始直後こそ、FW田中達也が積極的に仕掛けて相手ゴールに迫る場面を作ったが、その後はウルグアイペースで試合が進んだ。アルゼンチンやブラジルのようなスター選手もいなければ、プレーに派手さもないチームだが、ウルグアイのサッカーには南米の強豪と呼ばれるにふさわしい要素が随所にちりばめられていた。

 攻守の切り替えの速さと、的確な判断と精度に裏打ちされた技術。そして、自分たちはどうプレーするのかという組織としての明確なコンセプト。特に、多少相手に囲まれても、それをものともせずに突破して仕掛け、シュートを放つ強さは魅力的だ。その強さは身体的なものでもあるが、相手と勝負するという精神的な強さでもある。そしてそれこそが、日本のフル代表のみならず、つい先日北京オリンピックで惨敗したU−23世代の選手にも欠けている要素だろう。

 日本には前出のFW田中や、この日、積極的に右サイド深くまで攻め込んで、何度か好機を作り出したDF駒野友一のように、常にゴールを意識して前へ向かう姿勢を崩さない選手もいるが、多くは意識してか無意識になのか、そうした姿勢をオブラートに包んだようなところがある。そのせいか、「ここぞ」という場面でシュートやパスの判断が一瞬遅れ、的確なタイミングを外してしまっていることが実に多い。それが、得点機を作り出しながらゴールネットをなかなか揺らせない、日本の“決定力不足”の要因の一つになっていると言ってもいい。

 この試合で、日本は後半開始から長友佑都を左サイドバックに投入し、前半は左サイドバックだった阿部勇樹をディフェンシブハーフに置いたことで、試合の組み立てが改善されて、いくつか得点機を作れるようになっていた。

 だが、例えば後半20分にロストボールを囲んで奪い返し、FW玉田圭司にフィードして得点機を作った場面では、玉田はボールを受けてもすぐに打たず持ってしまい、その間に相手に寄せられてシュートを打てなくなってしまった(その直後に2次、3次と攻撃を展開し、MF小野伸二、MF長谷部誠のシュートで相手ゴールを脅かすことができたのは、いいフォローだったが)。

 また、後半ロスタイムに入った直後のMF山瀬功治のプレーも同様。同じく後半交代出場のFW大黒将志から、山瀬はフリーでパスを受けたが、ダイレクトで打たずに右へ持ってしまい、ディフェンス4人とゴールキーパーを相手にする羽目になってしまった。

 瞬時に的確な判断を下し、チーム全体でオートマチズムを持つ。そのレベルが上がらなければ、W杯最終予選でも苦労し、予選突破できても、その後の南アフリカでの本大会で日本が好成績を残すことは難しいだろう。今回は、ウルグアイのプレースピードについていけず、マイボールの状況から相手にアッという間にシュートまで持っていかれた。後半10分のMFセバスチャン・エグレン、後半38分のイグナシオ・ゴンザレス、そしてダメ押しとなったロスタイム3分のFWセバスチャン・アブレウの得点は、いずれもそうやって決められた。

 真剣にぶつかってきてくれたウルグアイに感謝し、日本はこの試合で見えた課題に取り組みながらレベルを上げつつ、9月6日のバーレーン戦(マナマ)から始まる最終予選を進むしかない。岡田監督も「この試合をどう生かすかが一番大切だと思う」と話した。

 厳しい表情を見せていた選手たちは、自分たちに欠けているものを感じ取ってくれたに違いないと、信じている。

岡田武史
田中達也
駒野友一
長友佑都
阿部勇樹
玉田圭司
山瀬功治
大黒将志

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