MLB Column from USABACK NUMBER
「日本人選手シーズンオフの処遇を読む」
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byGettyimages/AFLO
posted2004/12/27 00:00
松井稼頭央や石井がトレード候補になったり、田口が一時自由契約になったりと、日本のファンにとっては気がかりな動きが多いシーズンオフとなっている。特に石井の場合、「13勝8敗とチーム最多の勝ち星をあげたのに、なぜ、ドジャースはトレードに出したがるのか」と、理解に苦しんでおられるのではないだろうか?
なぜMLBのGM達が、日本のファンにとって不可解な動きを繰り返すのか、彼らの考え方を理解する鍵は以下の二つにまとめられるだろう。
1)貢献度の評価:投手の勝利数・防御率、打者の打率など、伝統的に使われてきた数字は、チームに対する貢献度を正確に反映するとは限らない。たとえば、投手の勝利数だが、どんなに打たれても、投手が取られた点を上回る点を味方チームが上げれば「勝ち星」が転がり込むなど、本当の力を現す数字とは言いがたい。そこで、最近は、貢献度を評価する数字が種々考案されるようになったのだが、その代表的な例が、「VORP(Value Over Replacement Player:控え選手を上回る価値)」である。打者の場合は、「並み」の控え選手と比べて、1シーズン当たりどれだけチームの得点を上積みしたかという数字であり、投手の場合は、「並み」の控え投手と比べてどれだけ失点を防いだかという数字である。
2)コスト効率:選手に払う年俸は貢献度に見合ったものか?
以下に、日本人選手の2004年のVORPと年俸を表にまとめたが、自分がGMだったらどうするか、MLBのGMになったつもりで、この表をお読みいただきたい(年俸はESPN.com によったが、契約金などは含んでいない。また、VORPの順位は、投手別・打者別での順位である)。
投手 | VORP(MLB順位) | 2004年年俸(万ドル) | 処遇 |
大塚 | 33.0(52) | 70 | / |
高津 | 26.5(75) | 75 | 再契約 |
大家 | 14.2(174) | 234 | 再契約 |
石井 | 13.2(185) | 250 | トレード候補 |
長谷川 | 5.5(297) | 275 | / |
多田野 | 5.0(301) | 不明 | 再契約 |
木田 | 3.0(349) | 不明 | 自由契約 |
野茂 | -23.2(679) | 900 | 自由契約 |
打者 | VORP(MLB順位) | 2004年年俸(万ドル) | 処遇 |
イチロー | 80.9(9) | 650 | / |
松井(秀) | 57.5(28) | 700 | / |
松井(稼) | 23.7(148) | 500 | トレード候補 |
田口 | 6.3(304) | 100 | 大幅減俸で 再契約 |
最後になるが、貢献度・コストに加えて、GMが選手の処遇を決める基準の一つに、「自分が獲った選手かどうか」ということがある。特に、新たに就任したGMの場合、前任者の失敗を正そうとする傾向が強いので、ドジャース、メッツの新任GMが、前任GMが獲得した石井、松井(稼)に対して冷たい仕打ちに出たとしても不思議はないのである。