Column from GermanyBACK NUMBER
若返りする監督とチームの成績は比例するか?
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2004/12/10 00:00
1試合を残しての時点だが、前半戦はバイエルン、シャルケ04、シュツットガルトから“秋の王者”が出る。これをハノーファー、ブレーメン、ボルフスブルクが追走する形で、2カ月間のウインターブレークに入る。
上位陣の共通点を発見した。いずれのチームもフロントのマネジメント能力が優れ、監督と選手が人間関係で問題を起こしていないのだ。
今季注目されるのは選手よりも、むしろ監督ではなかろうか。マガートが就任してバイエルンは規律が戻った。ザマーは若手揃いのVfBをさらに進歩させている。シャーフはリーグとチャンピオンズリーグで二股を掛けるブレーメンでFW陣を見事に回している。
個人的にいちばん注目している監督はシャルケのラングニック、マインツのクロップ、そしてハンブルクのドルである。
46、37、38。これ、何の数字かお分かりだろうか? 3監督の年齢である。
ドルもクロップもつい数年前まで現役選手だった。2人とも若い選手と精神的に近く、兄貴のように接するタイプである。プレミアリーグの大ファンだというクロップは、「オレってさぁ、マジでサッカーが好きなんだよ。わかってるじゃん」と若者言葉を操り、ちっとも権威をひけらかさない。
ドルは「君が決めたゴールにボクも大喜びしてしまったよ」と毎度毎度、タッチライン際で小躍りしてみせる。バルバレスとバインリヒを再生させたのは、ドルが選手の隣家に住んで、彼らの悩みを受け止めてやったからだと言われる。これでHSVは生き返った。
一方のラングニックだが、プロ選手の経験がない。すべてアマチュアチームでプレーしてきた。6つのクラブを渡り歩き、25歳から指導者の道に進んだ。だから年齢のわりに経験が豊富。シャルケは10番目のチーム指導となる。気難しいブラジル人選手に最大限の自由を与え、チーム躍進のエネルギーにしてしまう手腕には恐れ入ったものだ。
保守的なドイツサッカー界は、年長者を敬う傾向が強い。最年長者がキャプテンになり、監督は家父長的であることが求められる。伝統にこだわるチームは監督選びで実ではなく、「名」を取ろうと考える。それがボルシアMGのアドフォカートであり、フライブルクのフィンケなのだ。でも彼らの成績って…、あれ、15位と18位じゃないか!
サッカーは選手の華やかさに目を奪われがちだが、一歩下がって“船長”の人間性に注目するのも面白い。まだ日程の半分だ。あとの半分の航海を彼らはどう乗り切るのか――。半年後の検証が楽しみである。