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ファビオ・カペッロ 「レアル・マドリーへの遺言」
text by
宮崎隆司Takashi Miyazaki
posted2007/07/12 23:48
──カルデロン会長は何と?
「会談の末、カルデロンは翻意を促してきた。そこで私は一つの条件を提示した。『この先、選手起用他すべてについて、ミヤトビッチSD(スポーツディレクター)を一切干渉させない。これを約束してもらいたい』と。反カペッロの論調をメディアに書かせ、チームに混乱をもたらしたのが、紛れもなくミヤトビッチだったのだからな」
──不振の責任をミヤトビッチはミスターひとりに背負わせようとしていた?
「それは本人に聞いてくれ」
──とにかく、その条件をカルデロン会長は呑んだわけですね。
「そうだ。だからこそ私は残りのシーズンを勝者として終えるべく再び歩き始めた。CL敗退直後のバルサ戦(第26節=3月10日)、我々は3度にわたってリードし、結果として引き分けに終わったとはいえ、レアルは死んでいないことを証明した。バルサの追い上げ、それは一人の天才、リオネル・メッシの力に因るものだ。一組織としての力は我々が上回っている。チームはそう確信し、タイトルへの道を見据えたのだ」
──ここでの引き分けと、クラシコ初戦での勝利(第7節='06年10月22日)。この直接対決の結果が、最終的にタイトルの行方に大きな影響を及ぼしましたね。
「最も重要な事実だろう。レアル、バルサ共に勝ち点76でシーズンを終えたのだからな」
── 一方で今季は、戦力外としたロナウドやベッカムだけでなく、ラウールやグティ、エメルソンとの確執もメディアを騒がせました。
「どんなチームにも火種はある。私はチームのポジティブな結果だけを目的に歩み寄り、君が挙げた選手たちはそれに応えてくれた。だがロナウドだけは違った。彼の振る舞いは、アスリートとしてのそれから大きく逸脱していた。ゆえに私は彼を構想から外したのだ」
──つまり、同じように確執が伝えられたベッカムについては、違う見解なのですね。
「この一年で、私が犯した唯一のミスが、彼に対する判断だった。1月時点での彼は確かに集中力を失っていた。しかもシーズン途中でロサンゼルス・ギャラクシーへの移籍を決め、彼はそれを公言して憚らなかったのだ。それは私には許し難い行為だった」
──ところが……。
(続きは Number682号 で)