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連続PP記録を狙うベッテルに暗雲が。
レッドブルのアキレス腱「KERS」。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/05/06 10:30
中国GPのレース前パレードにて。ドイツ人同士として公私ともに親しいシューマッハとベッテルは、ベッテルが10歳の時(1997年)に出会っており、シューマッハがその才能を認めたという間柄だ
アジア・オセアニアラウンドを終えた2011年のF1世界選手権。たった3戦を終えたばかりだが、早くも見えてきたモノがある。それはレッドブルの速さと脆さだ。
主戦のベッテルが開幕3戦で3連続ポールポジション(PP)。昨年の最終戦から数えて4戦連続は、昨年ヨーロッパGPからハンガリーGPにかけて記録した自己ベストタイ。次戦でPPを獲得して5連続となると、近年では'06年のアロンソ(当時ルノー)以来の快挙となる。
しかし、ベッテルとレッドブルの速さはいまに始まったことではない。じつは昨年ベッテルは年間10回のPPを獲得しており、これは歴代4位タイ記録。年間二桁のPPを獲得したドライバーは1度の例外を除いて(例外は優勝した日本GPで失格処分を受けた'89年のセナ)、みなタイトルを獲っており、昨年のベッテルの初戴冠はむしろ当然の結実だったと言える。
さらに昨年レッドブルが記録した15回のPP獲得回数もまたマクラーレン('88年、'89年)とウイリアムズ('92年、'93年)に並ぶF1史上最多タイ記録。マクラーレンとウイリアムズが記録した過去4度はいずれも圧勝したシーズンで、もし昨年のレッドブルに信頼性の問題やチーム内の亀裂、あるいはベッテル自身のミスがなければ、レッドブルとベッテルがシーズンを席巻していた可能性は高かった。
ベッテルの2連覇を阻むのはライバルではなくマシントラブル!?
もうひとつ、ベッテルが今年2連覇する可能性が高い理由は、その若さにある。
ベッテル以前の近年のF1で、最年少記録の歴代5傑のうち、'90年代以降に年間王者になったドライバー3人を見てみよう。
'08年ハミルトン、'05年アロンソ、'94年シューマッハである。そのうち、大きくレギュレーションが変更されて不利を受けた'09年のハミルトンを除いて、シューマッハもアロンソも連覇を達成している。若くしてタイトルを獲得したドライバーはまだ底を見せておらず、翌年は速さに加えて強さを兼ね備えてくるというのは、今年の序盤のベッテルの戦いぶりを見てもわかる。
ところが、3戦を終えた段階で、ベッテルの2連覇にクエスチョンマークが付いた。