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連続PP記録を狙うベッテルに暗雲が。
レッドブルのアキレス腱「KERS」。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/05/06 10:30
中国GPのレース前パレードにて。ドイツ人同士として公私ともに親しいシューマッハとベッテルは、ベッテルが10歳の時(1997年)に出会っており、シューマッハがその才能を認めたという間柄だ
KERSのトラブルは第2戦からどんどん深刻化していった。
予選後にウェバーのKERSに問題を発見したチームはレース前にFIAの許可を得てバッテリーを交換するもKERSは機能せず、ウェバーはKERSを積んだままKERSを作動させることなく、3番手からスタートすることとなった。
マレーシアGPが行われたセパン・サーキットはスタート地点から1コーナーまでの距離が長く、KERS搭載車に次々と抜かれたウェバーは一気に9番手まで後退してしまったのである。
チームメートのベッテルもレース中盤からKERSが使えない状態となったものの、それまでに大きなギャップを築いていたため、大事には至らなかった。
ところが中国では2台そろってKERSにトラブルを抱え、ウェバーは予選で18番手に沈み、レース前半で問題が発生したベッテルもマクラーレンに逆襲を許してしまった。
信頼性の低いKERSがなくてもベッテルは連続PP記録を伸ばせる?
1周あたり約0.7秒~0.9秒のアドバンテージがあると言われるDRS(可変リアウイング)に比べて、KERSのそれは約0.3秒。オーストラリアと中国の予選で2番手以下に0.7秒以上の大差をつけているレッドブルの速さを以てすれば、KERSの問題は直ちに致命傷となるような深刻なものではない。
しかし、問題は「使わなくても十分に速いから使わない」のではなく、「きちんと使うことができないから使えない」という状態である。
アジア・オセアニアラウンドを終えたF1は5月から戦いの舞台をヨーロッパへ移す。
その幕開けとなる第4戦トルコGPの予選で、ベッテルは連続PP記録を伸ばすことができるのか。
そして、レッドブルはKERSにどのような手を打ってくるのか。2011年のF1の第2幕が切って落とされようとしている。