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新加入の槙野智章は活躍できるか?
絶好調のケルンを変えた3つの改革。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2011/03/02 10:30
FCケルンの育成システムで育て上げられ、ドイツ代表にまで上り詰めたポドルスキ。後にバイエルン・ミュンヘンへ移籍したが、ミロスラフ・クローゼ、フランク・リベリーらの加入に出場機会を減らされ、昨季には古巣へ戻ってきていた
共存するふたりのエースが生み出すゴールラッシュ。
そして3つ目の改革は、2人のエースが共存する関係を作りだしたこと。これは、ポドルスキのゴール量産とも関係している。
実は昨シーズン、ポドルスキがケルンに戻って来たことで、一つの問題が生じていた。ポドルスキがいない間にエースの座に君臨していたノバコビッチとの共存だ。
一昨シーズンに16ゴールを挙げたノバコビッチは、昨シーズンはわずか6ゴール。一方で、期待を集めて昨季から復帰したポドルスキにいたっては、わずか2ゴールだった。
新旧2人のエースが、お互いの役割を奪いあってしまったのだ。今シーズンに入っても、前監督のソルドの下でその問題が解決されたとは言い難かった。
そこでシェーファーは、2人を呼び、説得を試みた。
「2人を同時にチーム戦術の中で活かすというのは、非常に大きなチャレンジだった。それを成功させる唯一の方法は、2人が走るのをやめないことだ、と伝えたのだ」
以前は、守備力の低下を恐れた前指揮官がノバコビッチをベンチに置くこともあったし、ポドルスキが中盤やサイドで窮屈そうにチャンスメイクに徹することもあった。しかし、今は違う。2人を同時に起用しても、ハードワークを怠らないから守備のリスクも減った。
今では4-2-3-1のトップ下をポドルスキが、1トップをノバコビッチが務める形で固定された。前線で2人が絡みあい、片方がチャンスメイクをすれば、もう一方がゴールを狙う。縦に並ぶ強力な攻撃ユニットが完成されたのだ。
1試合平均の勝ち点1.5点は過去20年の監督で最高の成績。
シェーファーが就任してからの2人の得点ペースは上がり、15試合で11ゴールをたたき出した。昨季はシーズンを通じて2人でわずかに8ゴールだったのだが。
「シェーファーのおかげで、このチームは僕ら2人にかかっているんだってわかったよ」
ノバコビッチはそう語る。
シェーファーが1試合あたりに稼ぎ出す勝ち点はおよそ1.5点に及ぶ。これはケルンの過去20年間の監督の中で、もっとも良い成績だ(ただし、2部リーグでプレーしていた6シーズンは除く)。
さらに、後半戦はホームで4戦全勝。ブレーメン戦では3対0で快勝を収め、バイエルン戦では2点を先に奪われながらも3対2の逆転劇。マインツ戦では、ゴールラッシュを見せ4対2で、好調フライブルク相手にも1対0で勝利を飾った。なお、そのフライブルク戦のロスタイムに槙野は守備固めでボランチとして起用された。しばらくの間は我慢しつつ、わずかな時間でアピールしていくしかない。
これだけ攻撃陣の調子が良く、チームの雰囲気も良いと、槙野の出番が少なくなってしまうのも当然なのかもしれない。
この前も勝ったから、この試合でも勝てるはず。そう考えるケルンファンの熱気によって、スタジアムにこだまするイムノは日に日に迫力を増している。