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新加入の槙野智章は活躍できるか?
絶好調のケルンを変えた3つの改革。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2011/03/02 10:30
FCケルンの育成システムで育て上げられ、ドイツ代表にまで上り詰めたポドルスキ。後にバイエルン・ミュンヘンへ移籍したが、ミロスラフ・クローゼ、フランク・リベリーらの加入に出場機会を減らされ、昨季には古巣へ戻ってきていた
ケルンにも、イムノがある。
「讃美歌」を意味する「イムノ」。FCバルセロナの試合前、あるいは試合後に歌われるイムノは、サッカーファンならば誰でも知っている。だが、ケルンのライン・エナギー・シュタディオンで試合前に歌われるイムノを知っている人はどれくらいいるだろうか。ファンが総立ちになり、マフラーを振る様を見ていれば、誰でも鳥肌が立つはずだ。
ブンデスリーガの選手による人気スタジアムのアンケートでは、ドルトムントのシグナル・イドゥナ・パークについで2番目に、ケルンのライン・エナギー・シュタディオンが選ばれている。
そんなスタジアムを熱狂させているのが、47歳の新米監督、フランク・シェーファーだ。
プロ選手の経験がない新米監督にチーム再建が託された。
10月24日に前任者のソルドが解任されると、ケルンのU-23の監督を務めていたシェーファーに白羽の矢が立った。シェーファーは、プロ選手としてのプレー経験がなく、18歳のときにケルンの少年団のコーチとして指導者のキャリアをスタートさせた。以降は一貫して育成年代の指導者を務め、今季はじめてトップチームを率いることになった。
30万ユーロと推定されるその年俸は、現在のブンデスリーガ最高給をもらうファン・ハールの1カ月分の給料にも満たない。
しかし、新米監督が就任してから、チームの成績は上昇カーブを描いている。就任当時は18位、つまりリーグ最下位に沈んでいたチームが、今や11位。それまでの不調が嘘のように、後半戦の7試合で4勝2分1敗、勝ち点14を挙げた(以下、数字はすべて第24節終了時点のもの)。チームがうまく機能しているため、1月から加入した槙野智章がそうそう簡単に出場機会を得られないのも仕方がないところだ。
体育教師の資格を持つシェーファーは、学生時代に授かった教授からの言葉を今でも胸にとどめている。
「プロ選手としての経験がないのなら、ハードワークを怠らず、あらゆることを学んでいくべきだ」
コーチのロットナーも指揮官の勤勉さには舌を巻く。
「監督は練習の2時間前にはやってきて、念入りに準備をするんだ」