第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈創価大学〉エース・吉田響(4年)は「山の神」になれるか?「頑張るきっかけを与えられる存在になりたい」
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/23 10:00
全日本大学駅伝ではエース区間の2区をトップから1秒差の2位で走り抜いた
しかし満を持して臨んだ箱根駅伝5区では区間9位にとどまった。想定外の雨と寒さに体が固まってしまったといい、芦ノ湖で号泣しながら取材に答える姿が印象的だった。
レース前は練習もしっかりと積めており、「走れる」と確信した中での予想外の展開。「悔しかったし、まさか走れないなんて思っていませんでした。チームのみんなに対して申し訳ないです」と振り返った。しかしその負けがあったからこそ、その後の成長がある。吉田は今も「悔しかったです」と繰り返しつつ、「それはそれでいい経験になりました」と話す。
そんな吉田が5区にこだわる理由はなにか。
「シンプルに『山の神』と呼ばれる方たちの走りを見て、自分もそういう走りをしたいと思っています。そして、いろんな人に応援してもらっているので、自分のためだけでなく周りのため、それにチームの勝利のためにも5区を走りたいです」
今季の新チームが始動した時、4年生みんなで話し合った目標は「箱根駅伝で往路優勝して総合優勝」だった。それを達成するためにエースとして勝つべく走る。目標は前回の箱根駅伝で「山の妖精」と呼ばれた、城西大学の山本唯翔が樹立した区間記録、1時間09分14秒の更新だ。
「前回もいい走りをした青学大の若林(宏樹)くんのほかに、城西大の斎藤(将也)くんも5区にくるかもしれない。よりパワーアップした5区が見られると思うし、そこにしっかり食らいつけば68分台はいけると思います」
5区へのこだわりと勝利へのリアリズム
一方で、出雲駅伝と全日本大学駅伝の2区での好走は、平地でも十分力を発揮できると証明した形になった。2区の走りも見てみたいが……と話を向けると、「本音を言ったら、2区間行っちゃいたいですね」との言葉も聞かれた。
実際、榎木監督は吉田を5区ありきでは考えていないと話す。
「鍵を握るのは吉田ですが、山の神として力を発揮すれば往路優勝できるかというと、それは別問題です」
たとえば2区や4区の平地に吉田を起用すれば、往路優勝が近づくと榎木監督は考えている。吉田本人からもそのような発信があったと明かす。
吉田が力を発揮するのは、はたしてどの区間か。自らの夢を抱きながらも優先すべきはチームの勝利。真のエースとなった吉田が箱根駅伝のゲームチェンジャーとなる。