第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈日本体育大学〉「勘違いをして他責思考に…」自己嫌悪を乗り越えて山崎丞(3年)が獲得したエースたる信頼
posted2024/12/17 10:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Kiichi Matsumoto
日本体育大学は箱根駅伝で5連覇を含む10回の総合優勝を誇る名門だが、95回大会以降、久しくシード権を獲得できていない。近年は10位のボーダーライン上でも競えない状況が続いたものの、77年連続出場を決めた101回大会は例年以上に期待を抱かせる陣容となった。
3年ぶりに出場した11月の全日本大学駅伝では、後半まで8位入賞圏内でレースを進め、惜しくも10位でフィニッシュ。箱根駅伝でシード権を競うことが予想される大学と互角に渡り合い、玉城良二監督は手応えを得ていた。
「前半で流れに乗れば、戦えるんだなと確認できました。箱根駅伝でも3人の3年生で流れをつくり、力をつけた4年生たちが最後まで粘っていく展開になると思います」
3人の3年生とは、伊勢路の1区で区間賞を獲得した平島龍斗、2区で区間8位と力走した山崎丞、3区で区間11位と粘った田島駿介。12月1日の日本体育大学長距離競技会では平島が28分20秒32、山崎が28分19秒33、田島が28分11秒41といずれも10000mの自己記録を更新。正月の大舞台に向けて、弾みをつけた。切磋琢磨する3人のなかで最も鼻っ柱が強く、日体大のエースを自認するのが山崎である。箱根駅伝予選会ではチーム1番手でフィニッシュし、タイムを稼いで4位通過に大きく貢献。本大会では花の2区を志願する自信をのぞかせる。
「1年生のときから上りの特性がありましたし、スピードレースにも対応できます。2区は自分しかいないと思っています。距離が長くなり、コースが(上り坂で)きつくなるほど自分の強みは生きます」
エースに問われる人間性
今季は「チームの雰囲気をつくるのもエースの役割」と自らに言い聞かせ、練習に打ち込む姿勢はもちろんのこと、生活面から見直してきた。
「人間性がしっかりしていないと、競技には結びつきませんから。1年生での結果に慢心し、2年生のときは周囲に迷惑をかけましたので……」
しみじみと話す言葉には実感がこもる。1年生で箱根駅伝の1区に抜擢され、区間9位と好走。大会後も勢いは止まらなかった。2月のハーフマラソンで1時間02分06秒、4月の10000mでは28分23秒69と自己ベストを出し、チーム最速タイムをマーク。2年生になると夏前から故障を繰り返したが、箱根駅伝予選会ではチーム内で3番手と結果を残した。
「当時は自分の力を過信し、『俺はレースに出れば、走れるんだ』という感覚があったんです。箱根駅伝も少し調整すれば走れる。ちゃんと練習しなくても大丈夫だろって。今、考えれば、大きな過ちでした。夏前にケガをしたときも指導陣が自分の才能を潰している、と思っていましたし……。変な勘違いをして他責思考になっていました。自分のせいなのに。人間性が崩れると、自分のやるべきことまで見失ってしまいます」