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那須川天心「批判する人も多くて…」タイトル獲得も賛否両論…苦戦の理由とは? じつは認めていた“経験不足”「練習通りにはなかなかいかない」
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布施鋼治Koji Fuse
photograph byNaoki Fukuda
posted2024/10/18 17:34

ジェルウィン・アシロ(右)に判定3-0で勝利し、WBOアジアパシフィック王者となった那須川天心。大方の予想以上に「苦戦」した理由とは
「素直に喜んでくれる人もいれば、批判する人も…」
苦戦したもうひとつの理由は、初めてバンタム級のリミットで闘ったことだろう。デビュー戦と2戦目は55kg台とキックボクサー時代とほぼ同じ体重で闘い、今年7月の試合では120ポンド(約54.4kg)、そして今回は53.5kgと段階を経て落としてきた。
「まさかキックボクシングのデビュー戦のときより軽い体重で闘うとは思わなかった」と本人は語る。それでも、ボクシングへの転向が現実味を帯びてきたとき、「転向したら何級で闘うのか?」という話になると、即座に「バンタム級までは落ちると思うんですよね」と答えていた。
この一戦に向け、天心は一時期53kgまで体重を落としたという。一度リミット以上に落とすことで、その体重で自分がどれだけ動けるのか試したかったのだろうか。
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決戦翌日に行われた一夜明け会見で、天心は次のように今回の減量について語った。
「500g刻みで落としていったんですよ。でも(試合時に)55kgからいきなり1.5kgも軽くなってしまうと、調整の仕方も変わることがわかった。そこは慣れの部分も大事になってくると思ったので、今回こういった試合ができて本当によかった」
試合後はファンも含め、周囲の反応が賛否両論だったことも打ち明けた。
「僕のファンって若い人も昔からのファンも、最近ボクシングに入ってきてくれた人もいるみたいな感じで。層は広いと思うけど、『ベルトを獲っておめでとう』と素直に喜んでくれる人もいれば、批判する人も多くて……」
ダウンを奪ったのは9ラウンド、左ボディでアシロがバランスを崩した場面のみ。それも見方次第ではスリップダウンと受け取られそうなものだっただけに、倒せなかったことに対するバッシングが起こるのも不思議ではない。しかし、全ては期待の裏返し、と受け取ることもできる。ネガティブな意見も天心は前向きに受け止めている。
「賛否両論ある中でいろいろなものを巻き込んでいるので、すごくいいなと思いましたね」
KOすることはできなかったが、実戦でしか得られない経験を積むことはできたということか。天心は「練習通りにはなかなかいかない」と前置きしたうえで、アシロ戦で得た課題について語った。
「足を使ってポイントをとってくる選手で、思っていたよりやりづらい選手だった。そういう中でポイントがとれて勝てた。でも、やれることはもっとたくさんあったんじゃないかと思います」