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那須川天心「批判する人も多くて…」タイトル獲得も賛否両論…苦戦の理由とは? じつは認めていた“経験不足”「練習通りにはなかなかいかない」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byNaoki Fukuda

posted2024/10/18 17:34

那須川天心「批判する人も多くて…」タイトル獲得も賛否両論…苦戦の理由とは? じつは認めていた“経験不足”「練習通りにはなかなかいかない」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

ジェルウィン・アシロ(右)に判定3-0で勝利し、WBOアジアパシフィック王者となった那須川天心。大方の予想以上に「苦戦」した理由とは

来秋の世界挑戦へ…評価を変える試合ができるか

 2日間にわたるビッグイベントの中でも、天心は世界王者以上の声援を浴びていた。入場シーンになると、多くの観客はスマートフォンを動画モードにして、レンズを入場ゲートや巨大スクリーンに向けた。

 会場に集まった子供たちからの声援の多さも抜きん出ていた。注目度という部分において、天心が圧倒的であることは誰も否定できない。最近は移動でタクシーに乗るたびに、知名度の広がりを感じるようになったという。

「(運転手さんは)結構年配の方が多いけど、ほぼ声をかけられるようになりましたね。『SNSを使っていない世代の方も見てくれているんだな』と思いました」

 陣営は次戦を来年2月ごろ、その次は6月ごろという青写真を描く。2試合をクリアすれば、いよいよ秋にも世界タイトル挑戦ということになる。期待されているのは、同じキックボクシング出身で天心より一足早く世界王者になった武居由樹との対戦だ。この日の試合後、天心はリングサイドで観戦していたWBO王者に「勝ちましたよ」と声をかけたが、直接対決はしばらくお預けか。

 何があっても、天心は前を向く。ボクシング転向5戦目にしてタイトルという明確な結果を残したことで、天心は「ひとつの形として、ベルトを獲れたことはうれしい」と喜びを口にした。

 とはいえ、世界を目指す者にとって地域王座は通過点に過ぎない。そもそもキック時代からベルトそのものには興味がなく、天心はこれまでに獲った何本ものベルトとともに写真に収まることを頑なに拒んでいた。ベルトよりも自分の価値を高めることに腐心していたからだ。

 その価値観はいまも変わっていない。一夜明け会見で「昨日はベルトとともに寝たのか」という質問が飛ぶと、いかにも「那須川天心らしい答え」を口にした。

「あのベルトはですね、しっかりと控室に忘れてしまいまして、粟生さん(粟生隆寛トレーナー)が持っていてくれました」

 さらなる経験を積むため、天心は12月にも米国でキャンプを張る予定だという。ボクシングは1試合の出来で評価がガラリと変わる競技だ。今回の試合では「期待以上のもの」を見せることはできなかった。だが、いかにアンチといえど、いまだ成長過程にある天心の存在を忘れることはあるまい。

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