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「お互いヘボ同士なんだから…」秋初戦敗退の“偏差値66公立校”が夏の甲子園1勝「大社さんもそうでした」“栄冠の舞台裏”を掛川西監督に聞く

posted2024/10/13 06:00

 
「お互いヘボ同士なんだから…」秋初戦敗退の“偏差値66公立校”が夏の甲子園1勝「大社さんもそうでした」“栄冠の舞台裏”を掛川西監督に聞く<Number Web> photograph by Kyodo News

今夏の甲子園で1勝を挙げた掛川西。1年前の8月は「秋季大会初戦敗退」だった公立校はいかにして栄冠を手に入れたのか

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間淳

間淳Jun Aida

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 2024年夏の甲子園は、公立校の躍進が話題となった。その1つが掛川西高校である。偏差値「62−66」で国公立大学への進学者も多い同校の野球部が、昨秋の初戦敗退から翌夏の静岡県大会優勝の栄冠に輝き、甲子園1勝へと駆け抜けるまでには“異端”ともいえるプロセスがあった。大石卓哉監督(44歳)に舞台裏を聞いた。〈NumberWebノンフィクション/全3回の第1回〉

昨年8月に秋季大会初戦敗退…どうすればいいのか

 先を考えるのが嫌になるほど長い。

 そんな長すぎる秋が、絶望から頂点、そして甲子園での1勝へと駆け上がる原動力となった。

 まだ暑さが残る2023年8月19日。掛川西は秋季高校野球静岡県大会予選の初戦に臨んだ。結果は浜松工業に2-3で敗戦。翌春のセンバツには遠く及ばず、8カ月後の春季大会まで公式戦がない長い秋へと突入した。

「試合はないけど、時間はたっぷりある。何をして過ごせばよいのか」

 掛川西を率いる大石卓哉監督は夏のシード権を争う春の大会、その先にある夏の甲子園出場に向けて、時間の使い方を熟考せざるを得なかった。さらに初戦敗退後、大会を勝ち上がった他校の試合を観戦して、力の差を痛感した。

「今までと同じ過ごし方をしていたら、夏も県で優勝できない」

 そう悩んだ末、1つの結論を出した。

「掛川西のフィロソフィーをつくろう」

 練習と並行して、大石監督は3カ月かけて、チーム方針やルールを明文化したのである。最初のページには、こう記されている。

《目的……社会で必要とされる人間になる

 目標……甲子園ベスト8

 掛川西高校野球部は掛川市民からの期待を一身に背負った市民球団である。また、県内選手で構成された「最後の砦」として本校が甲子園で躍進することは、多くの静岡県民の悲願である。この計り知れないプレッシャーから逃げることなく、全県の期待を力に変え、日々目標に向かって大きく進撃することこそ、我々の使命である。》

 この文章には、静岡県内の公立校の現状が反映されている。例えば甲子園常連の県立静岡高校は昨年、県外から選手が入学している。掛川西は県内選手だけで構成した伝統校の誇りを持っており、「最後の砦」としての使命感を抱いている。それをチーム全体に浸透させようとした。

ヘボ同士なんだから、せめて同じ方を向こう

 フィロソフィーの内容は走攻守における判断の基準や練習試合の狙い、練習の心得や怪我を避ける行動など多岐に渡る。中には、「ポケットに手を入れない」といった指導者の禁止事項も含まれている。

「勝てないのはお互いに課題があったからです」

 大石監督は、改善に至るためのステップを明かす。

【次ページ】 ヘボ同士なんだから、せめて同じ方を向こう

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