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「卓球部か野球部か」迷って入部の2年後、甲子園で好リリーフ「私立に及ばない部分は…だからといって」44歳監督が語る“公立校のロマン”
posted2024/10/13 06:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
公立の進学校と私立の強豪校では環境が違う。その違いを嘆いたり、うらやんだりしても、現状は変わらない。
静岡県有数の進学校、県立掛川西の野球部を率いる大石卓哉監督は私立との違いを「差」とは捉えていない。実際、今夏は甲子園に出場し、初戦は山梨県の私立・日本航空に勝利している。
「公立高校の教師は異動があるので、同じ監督が10年、20年と指揮することはありません。監督の色を出すよりも、入部した選手に応じて毎年チームカラーを変えていくことが、チームの強さになっていくと考えています。選手の特徴を生かしたチームづくりを大事にしています」
「学校裁量枠」があっても授業・テストはある
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静岡県には「学校裁量枠」という仕組みがある。公立校の入学者を選抜する方法の1つで、高校独自の裁量で合格者を決められる。
他の都道府県と比べて、静岡県では公立校が野球やサッカーなどで好成績を残しているのは学校裁量枠も大きく影響している。甲子園常連の静岡高校も学校裁量枠を使い、近年は県外の中学からも野球部に入っている。
掛川西は県内出身だけで構成しているが、学校裁量枠を活用している。大石監督は「掛川西は甲子園出場経験のある伝統校なので、選手を集める上で他の公立高校よりもアドバンテージがあるのは間違いありません」と話す。ただ、学校裁量枠で入学した生徒も当然ながら、他の生徒と同じように授業やテストを受ける。そのため、野球に専念したい生徒は私立の強豪校を選ぶ傾向にある。
公立校では学校裁量枠の選手に加えて、一般入試で入学した選手がチーム力を高める上で重要になる。例えば掛川西だと、夏の甲子園で好投した増井俊介投手もその1人だ。
卓球部と迷う中で「メリットとデメリットを説明した」
しかも増井は入学当初、野球部と卓球部のどちらに入るか迷っていたという。
大石監督が当時を振り返る。
「増井は野球部を見学して『とてもついていけそうもないので、他の部活も見てきます』と言って、卓球部に仮登録を出しました。中学で野球をやっていたのは知っていましたし、体格に恵まれていたので、野球部に入るメリットとデメリットを説明してから、最後は自分で決めるように伝えました」
身長187センチ、体重97キロの増井は高校入学当時、筋力や瞬発力に課題があり、直球の最速は120キロに届くかどうかだった。だが、大石監督は潜在能力の高さを感じていた。体力や投手としての力に自信が持てていない増井投手に語りかけた。