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ゆりやん、唐田えりか熱演『極悪女王』で思い出す…“1984年伝説の青春ドラマ”「応募3500人、北斗晶が入門決意」「鬼コーチ役は和田アキ子」
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/09/26 11:03
Netflix『極悪女王』で主演を務めたゆりやんレトリィバァ。配信記念イベントでは、演じたダンプ松本を彷彿とさせる表情で作品をアピールした
ドラマ内ではプロレスにつきものである「八百長論」についても言及。「プロレスとは何か?」「プロレス興行とはどうあるべきか?」という核たる部分に関しては、菅原文太と和田アキ子の口喧嘩、それにタコ社長も加わってての口論の中で提示されている。プロテストを控えた新人たちに、プロレスならではのショーマンシップを説明する際、大相撲の仕切りと立ち合いに例えるあたり、女子プロレスを綿密に取材したうえで原作、脚本を執筆した山田太一ならではのプロレス論が見てとれる。
その他、現在は歌手のイメージが強い今井美樹と、今や議員センセイである三原じゅん子が神社で決闘するシーンやら、巡業から事務所へと帰還してきたジャガー横田、デビル雅美からクラッシュギャルズ、極悪同盟入りする以前のブル中野(当時・中野恵子)までの全選手(※極悪同盟は除く)が、新人たちと初対面し、それぞれ挨拶代わりに体験談やアドバイスを送るシーンにて、それはもう見事なまでの(棒)演技を披露しているのにも注目だ。クラッシュギャルズブームを経た好景気によって建て替えられる以前の全女の事務所兼道場も映像に残されている。40年の月日を熟成された映像ならではの見どころが満載だ。
放送翌年に応募者3500人…北斗晶も
遠藤京子(現・遠藤響子)が歌う同名主題歌は当時も爆発的ではなかったにせよ、よくラジオでかかる程度にはヒットしていた名曲。このドラマに背中を押されて翌年(85年)に女子プロ入門を果たした北斗晶が2012年に「24時間テレビ」のチャリティーマラソンランナーとして一家で出演し、見事に完走、ゴールした後に、遠藤自身も番組に出演しこの曲をピアノで弾き語りした場面は記憶に新しい。
劇中、少女たちが受けたのは東洋女子プロレスの「1984年度 新人オーデイション」だったが、現実世界の全女「昭和59年度オーディション」にて合格し、無事にデビューしたのはコンドル斉藤、永堀一恵、加藤悦子とわずか。いわば不作の年だったといえる。
ところがクラッシュギャルズ人気、そして北斗同様に『輝きたいの』に背中を押されたのか? 翌85年の新人オーディションには何と3500人もの応募者が殺到。その厳しい競争を勝ち抜いてデビューしたのは北斗晶、みなみ鈴香、堀田祐美子、西脇充子、グリズリー岩本、石黒泰子、浅生恭子、ドリル仲前、影かほる、中島小百合、岡林理恵、神崎文枝、坂本あけみら驚異の人数。大豊作だったのだ。
狭き門を勝ち抜いてきた「選ばれし者」だけあって、この年代の選手は身長も骨格も大きく、運動神経の良い選手が多い。