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「ここは俺にあげろや!」高橋藍が怒声を浴びせた相棒セッターの選択…敵将も舌を巻いた驚愕プレーとは「あの上から打たれたら打つ手がない」―2024年上半期読まれた記事 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byYohei Osada/AFLO

posted2024/09/25 11:00

「ここは俺にあげろや!」高橋藍が怒声を浴びせた相棒セッターの選択…敵将も舌を巻いた驚愕プレーとは「あの上から打たれたら打つ手がない」―2024年上半期読まれた記事<Number Web> photograph by Yohei Osada/AFLO

東山高校時代の高橋藍。キャプテンとして春高バレーでチームを全国制覇に導いた

 20点を超えた終盤、1点を求めたい勝負所だったが、トスを上げる前に対戦相手が高橋への警戒を強めた姿が中島には見えた。たとえブロックが2枚、3枚来ようと「藍ならば決めてくれる」とわかっていたが、中島はあえて別の選手にトスを上げた。エースの高橋に上げるばかりでなく、こういう場面で散らすことも必要だと考えたからだ。

 中島の思惑通り、相手の意表をつき、ほぼノーマークに近い状態で決まり、東山に得点が入った。見る角度を変えれば、評価に値するプレーだ。ただ、その直後、「健斗!」と自身を呼ぶ高橋の声が響いた。

「何であそこ、俺にトスを持って来うへんねん」「ここは、俺に上げろや!」

 高橋にあったのは「勝負所は自分が決める」というプライド。余分な遠慮などいらない。中島が苦笑いと共に記憶をひもとく。

「たとえばシャットされた時も、僕はまず『ごめん、俺のトスが悪かった』と思うから、次はもっといい状況で確実に決めさせようと思うんです。だから次のラリーでも また藍にブロックが来ていたら、そこには上げず、別のところを選択する。でもそれが『違う』と。エースは、シャットされた時点で、どんな状況であろうと『クソ、次 は決めてやる』と思う。だからもう1本俺に持ってきてくれ、と藍に言われて。決めやすいようにとか、余計なことを考えず、託すべきところは託す。そうすれば藍は決めてくれる。エースの心理を藍に教えてもらいました」

敵将も舌を巻いた圧巻のプレー

 中島とのコンビを確立した高橋は、ライバル洛南に打ち勝ち、ついに高校最後のシーズンで春高へたどり着いた。悲願の大舞台で、高橋はエースたるゆえんを存分に見せつける。

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