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「類まれな身体能力」「体重がありながら…」関係者が語る斉藤立の“人柄だけじゃない”本当の評価…パリ五輪まさかの5敗でも、規格外の将来性
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2024/08/16 11:03
パリ五輪ではリネールとの2連戦でも話題を集めた斉藤立
柔道界から本当の評価「類まれな身体能力を持っている」
日本柔道界は重量級に価値を見出し、重量級を誇りとしてきた。山下泰裕、斉藤の父である斉藤仁(2015年死去)。本来は100kg級である現日本代表監督の鈴木桂治も、2004年アテネ五輪では100kg超級で金メダルを獲得しており、名だたる柔道家が並ぶ。
ただオリンピックでは2008年北京五輪の石井慧を最後に、100kg超級で頂点に届く日本の選手はいなかった。体重の上限がない階級だから、体格に勝る海外の選手は多い。日本の選手は苦戦を強いられてきた。
そんなときに現れたのが斉藤だった。
台頭してきた頃、全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は高い評価を与えている。
「あの大きな体をコントロールできる選手は最重量級で見たことがありません。類まれな身体能力を持っていると思います」
鈴木監督もこう評している。
「立って投げられるのが大きいですね。才能という点で、斉藤先生のDNAを引き継いでいます」
「体重がありながら…」敗れた選手が語った言葉
2022年4月の全日本選抜体重別選手権は鮮烈な印象を与えた大会だった。
初戦は影浦心。2020年グランドスラムパリでテディ・リネールに勝利、リネールの連勝記録を154でストップし、2021年世界選手権で優勝した階級を代表する実力者を相手に、開始1分45秒で一本勝ちをおさめたのだ。影浦は試合後に斉藤の印象をこう語っている。
「体が大きかったです。ひとまわりも、ふたまわりも違う印象があって、やってきた対策もできなかったです」
リオデジャネイロ、東京五輪の100kg超級で2大会連続銀メダルを獲得、最重量級を牽引してきた原沢久喜は、2022年全日本選手権で初めて斉藤と対戦し敗れた。
「体重があんなにありながら、受けが安定しています。今までの日本人選手、海外選手を含めて、あまりいないと思います」
191cm、160kgを超える体格、投げ技の魅力……。それぞれの言葉に、斉藤のポテンシャルと将来性が込められていた。
日本重量級の、そして五輪で2大会連続金メダルを獲得した父の後継者として期待と注目はより高まっていった。