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「(代表選手で)いちばん強い」永瀬貴規の“キャラだけじゃない”柔道界のリアルな評価…素顔は「超努力家」、ウルフアロンに勝った大学時代
posted2024/08/22 17:32
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Tetsuya Higasikawa/JMPA
持ち味を存分に発揮し、パリ五輪柔道男子81kg級、永瀬貴規は東京五輪に続く連覇を果たした。
初戦となった2回戦は開始2分もたたないうちに合わせ技一本。3回戦で延長戦の末に勝利をおさめると、準々決勝では世界ランキング1位を相手に延長戦で技あり。準決勝では技あり2つで合わせ技一本勝ちをおさめ、決勝で世界選手権3連覇のタト・グリガラシビリ(ジョージア)を迎える。強敵を相手に1分52秒、2分48秒にともに谷落としで技ありを奪い、一本勝ちで金メダルを手にした。5試合で取られた技ありはゼロ。粘り強く勝機をうかがいながら、安定した戦いをみせた。
「私らしい柔道ができて、それが結果につながりました」
連覇を成し遂げての言葉にも、自身の柔道を存分に表せた充実感があふれていた。
大野将平の証言「永瀬がいちばん強いです」
「たぶん、世界でいちばんこの階級の人口は多いです」と日本代表の鈴木桂治監督が言うように、欧米の選手にとって平均的なサイズということもあり、選手層は厚い。この階級で五輪連覇を果たした選手が今までいなかったことも永瀬の価値を示している。
畳の内外での「寡黙」ともいえる落ち着いたたたずまいやふるまいも話題を集めた永瀬だが、その実力は柔道界ではかねてから定評があった。
東京五輪の代表が決まったあとの2020年、リオデジャネイロ五輪と東京五輪で連覇を果たすことになる73kg級の大野将平は語っている。
「(代表選手の中で)永瀬がいちばん強いです」
階級が上の選手も含めて、そう評価したのだ。永瀬と大野は階級も近く、互いに稽古をすることも珍しくはなかった。永瀬の強さを身をもって知ったうえでの言葉だった。