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〈大麻使用で直前に代表剥奪→パリ五輪出場〉アメリカの世論が沸騰した陸上女王リチャードソンの復活劇から考える「体操・宮田笙子の歩む道」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS/AFLO
posted2024/08/02 17:02

パリ五輪出場を辞退した宮田笙子(左)と陸上女子アメリカ代表のシャカリ・リチャードソン
「自分が何をしたのか、何をすべきか何をしてはいけないかを知っています。それでも、その決断をしました。言い訳をするのではなく、共感を求めてもいません」
その直後、アメリカのアンチドーピング機関が、禁止薬物の大麻に対する陽性反応により1カ月の資格停止処分を科すことを発表した。それに先駆けて自ら明かしたのである。
マイケル・ジョンソンも擁護
すると、リチャードソンへの共感や処分への批判がSNS上で多数アップされた。大麻はドーピングの禁止薬物ではあるが違法薬物ではなく、州によって使用が認められていることから処分を疑問視する意見も少なくなかった。
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著名人も声を上げた。オリンピックで4つの金メダルを獲得した陸上界の英雄であるマイケル・ジョンソンは「なぜ大麻が禁止なのか分からない。両親を亡くすことはどんな気持ちか分かる。理由を知らずに資格停止にするのはばかげている」と投稿。NFLのトップ選手の一人であるリチャード・シャーマンは「この若者をとても誇りに思うと同時に、(リチャードソンに批判的な)社会に不満を感じている」とメッセージを発した。スポーツ界に限らず、俳優など各界からも同趣旨の言葉があげられた。
ホワイトハウスも反応
ついには政界にも波及した。ホワイトハウスのサキ報道官はテレビのインタビューにおいて、「ルールがあるのは承知しているが、それらを見直すべきなのかもしれません」と語ったのである。
多くの反響の中、全米陸上競技連盟もまた、リチャードソンを支援すると発表した。
リチャードソンは2021年8月下旬、オレゴン州で行われたダイヤモンドリ―グ第9戦で復帰。100mでは最下位に終わったものの、再出発の一歩を記した。
「これは一つのレースでしかなく、自分の力はみんなが分かっています。自分はまだまだこれからです」