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トランポリンを離れ、回転寿司屋でアルバイト「正直、二度と出たくないと…」失意の東京五輪から3年、森ひかる(25歳)がパリで取り戻した笑顔
posted2024/08/03 17:04
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
笑顔があった。涙もあった。けれども涙の意味は3年前とは違っていた。パリ五輪トランポリン女子の決勝が行われ、東京五輪から2大会連続出場の森ひかる(TOKIOインカラミ)が54.740点で6位入賞を果たした。
「終わった瞬間は本当にやり切れて良かったという気持ちと、大会を楽しめたという嬉しい気持ちでいっぱいでした」
森は笑顔で言った。
その笑顔の裏には一抹の悔しさもあった。
予選1本目で森を襲った「東京五輪のトラウマ」
「どこかで何か悔しいような気持ちがあって、まだその気持ちを持つことができてるということも若干嬉しいような、そんな気持ちです」。そんなふうに表現した。
3年前の東京五輪。森は演技を途中で中断して予選落ちするという苦い経験をした。そのトラウマがパリ五輪の予選1本目で再び彼女を襲った。
「すごく緊張しちゃって、大丈夫かなと思ったのですが、会場に入ったら聞いたことがないほどの歓声が聞こえてきて、それを肌で感じることができてプラスの方向に働かせることができました」
その結果、森は2回跳ぶ予選の2本目で持ち前の高さのある跳躍で55.150点をマーク。16人中6位で、8人による決勝進出を決めた。
決勝でも魅せた。高さと安定感のある跳躍や美しい空中姿勢は、これぞ森ひかる、というパフォーマンス。若干の移動はあったが、全体を丁寧にまとめた。