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「母への永遠の愛を滑りたいな」浅田真央が明かすアイスショー『Everlasting33』に込めた“愛”「誰も見たことのない景色を届けたい」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2024/06/15 17:02
公演中のアイスショー『Everlasting33』の座長を務める浅田真央が6月16日の千穐楽に向けて思いを語った
「その中で、たった2票しかなかった『キス・ザ・レイン』を聴いた瞬間に『これだ!』と。『こんな素敵なメロディあったんだ。これはもう滑るしかない』と決めました」
美しいピアノの音色が印象的な、韓国のピアニスト、イルマの作品。これを中盤のソロにした。胸にバラの花を抱き、白いドレスで、しっとりと舞う。
「今回の舞台は、それぞれのプログラムに、家族愛、友情、スケート愛、踊りへの愛など、色々な愛をこめていくというテーマなので『私のソロのパートは、母への永遠の愛を滑りたいな』と、自然に思うことができました。ショーのテーマが『永遠の愛』で、モチーフがバラ。母もバラが好きでしたし、そして母への愛は永遠。いろいろな思いがリンクして『ああ、この曲とは、意味があって出会ったんだな』と思って……。この2票を投じてくださった2人の方に『こんな素敵な曲に出会わせてくれてありがとう』と思いました」
母への思いを胸に、自身で振り付けた。あえて技を詰め込まずに、のびやかに、美しいポジションと、優しさ溢れる滑りを見せる。
「33歳になった今でも、母のことは毎日思います。忘れることはないです。常に365日、母のことを想っている。その気持ちをこめたプログラムです」
「ボレロ」に込めた想い
もう1曲のソロも、ファン投票で決まった。ラストに滑る『ボレロ』である。
「『ボレロ』は投票で圧倒的な第1位でした。ちなみに2位は『仮面舞踏会』でしたが、試合で滑ったことのある曲でしたので、迷わず『ボレロ』に決まりました」
モーリス・ベジャールが振り付けしたバレエの名作『ボレロ』。バレエ界では許可された者しか演じられない、世界トップの称号ともいえる作品である。
「日本人女性では上野水香さんだけが許されている名曲です。バレエ界への敬意もこめて、自分のすべてを捧げて、自分にしか出せないボレロを演じようと思いました」
バレエの舞台をイメージし、赤と黒のシンプルな衣装をまとう。演技の冒頭は、シンプルなサークルを描くコンパルソリーから始まる。スケートの発祥ともなる、基礎のトレーニングの動きである。
「フィギュアスケートはコンパルソリーが基礎にあり、そこから進化していったもの。コンパルソリーを次世代にも永遠に語り継いていきたい、という想いをこめています」
「姉と作った姉妹愛も入っています」
その後、演技は徐々に力強くなり、リズミカルな動き、情熱的な演技、苦しさがにじみ出るような感情の噴出と、さまざまな場面が紡がれていく。姉の舞と相談しながら2人で振り付けた。