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「藤井聡太名人の肩に飛行機が鳥のように…」「豊島将之九段の手、夕焼けも美しい」観る将マンガ家が描く“画面では映らない”羽田空港対局
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph byJunsei Chida,NumberWeb
posted2024/05/27 06:00
羽田空港第1ターミナルで開催された名人戦第3局
編集担当さんと話題になったのは、前日の1日目、スタジオ内の解説と羽田空港をつないだ中継のこと。勇気八段が展望デッキから風景を紹介する……という流れだったんですが、
「あっ! 飛行機が飛んでるーっ!」
こんな感じで、スタジオの伊藤沙恵女流四段と山川泰熙四段の質問をほぼ“飛ばす”ような自由すぎるやり取りに、さすが勇気先生と思っていたんですが(笑)、ホールの隣に位置している展望デッキに行ってみると、数分に一度は離陸・着陸をしている!
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「ドン! ……ヒューーーン!」
着陸時の飛行機やその音を生で見聞きするのはいつ以来だろう……と勇気先生と同じような感慨に浸りつつ、前夜祭で藤井名人も「対局場からも滑走路や駐機場が見えます。明日からの対局でも楽しみながらリフレッシュしつつ集中して指したいです」と話していましたが、確かにいつもとは違う空間で、高揚する要素にあふれているなと思いました。
空港とは思えない静寂に包まれた対局場
そんな感じで大盤解説を見ていると……夕食休憩直後に豊島九段が投了し、藤井名人が勝利しました。
「では、ここから対局場に移動します」
思わぬタイミングでの投了を受けて、担当者の声掛けから急ぎ足(空港なので走らないようにしつつ)で移動することに。対局が行われていた場所は大盤解説場から移動して、ワンフロア降りてカフェやショップを抜けて厳重な警備がされているオフィス棟へ……と、だいぶ遠い。「そういえば椿山荘の対局の時も結構歩いてたどり着く、離れの場所だったな」と思い出しつつ、それだけ静謐な空間を保とうとしているのだな、とあらためて感じました。
記者陣を待つ藤井名人と豊島九段、そして康光九段らがそろう対局室は——これまでも経験したように——少しひんやりとした、それでいて静寂に包まれていました。
対局後のインタビューで藤井名人が「対局室からも飛行機の離着陸の様子がよく見えて、景色を眺めてリフレッシュすることも多かったです。良い環境の中で対局することができたのかなと思っています」とも話していました。大きな窓からは着陸する飛行機が見え、美しい夕焼けが空港を包む姿をバックにインタビューと感想戦が始まるという幻想的な時間でした。
藤井名人の肩に飛行機が止まるかのように…
1年ぶりの藤井名人、そして2020年竜王戦以来となる豊島九段の姿と生声。対局のキーポイントとなった場面を聞けるのは貴重……さらに漫画家としてビックリしたのは、豊島九段の左手でした。