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「体重が43kgを超えると怖くなって…」“全中&インハイ出場→駅伝日本一の実業団”の女子ランナーが語る体重制限の怖さ「月経も止まっていました」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by(L)本人提供、(R)Miki Fukano
posted2024/03/12 11:01
中高と全国大会で活躍後、女子駅伝の強豪チーム・パナソニックにも所属した國立華蓮さん(23歳)。現在はモデルとしても活躍している
「もっと絞ったほうがいいんじゃない?」…指導者の一言
160cm、48kg。一般的に見たら決して重くはない。だが、中学時代の練習で関わったある指導者からの言葉が胸にチクリと刺さった。
「もっと身体を絞ったほうがいいんじゃない?」
その時に教えられた方法は、夜の食事を抜いて、さらに走行距離を増やすこと。当時14歳の國立さんは、その安易な減量法を鵜呑みにするほかなかった。
「確かに、言われる前から体重が増えたのは気になっていたんです。実際、走りの感覚も重かったですし、ペースが安定しないような気もしていて……。焦る気持ちが強かったのだと思います」
指導者の指示どおり、國立さんは90分ジョグやロングインターバルなどの練習を増やした一方、夕飯は小鉢に1杯分のおかずのみに留めた。その結果、2カ月後に体重は4kg落ちていた。そして、実際に走ってみると、確かに身体の軽さを感じた。
この「成功体験」が引き金となり、体重・食事管理への執着が始まっていく。國立さんは当時の食生活を今も鮮明に覚えているという。
「炭水化物や脂質は極力摂らないようにして、タンパク質と野菜のみで身体を動かしている状態でした。給食のご飯はお茶碗の底が見えるまで減らして、牛乳も低脂肪ではないものは一切飲まない。揚げ物の衣も外して食べていましたし、スナック菓子なんて絶対食べませんでした」
食事量は明らかに減っているのに、練習量は格段に増えていた。当時の摂取・消費カロリーのバランスは「ぐちゃぐちゃでした」と、彼女は表現する。走るモチベーションも、強くなるためではなく、身体を絞るためになっていた。そして中学3年生の春、月経がぴたりと止まった。
「これは追い込めている証拠なんだ」
無月経は長年放置すると、将来的に不妊症や骨粗鬆症などのリスクが高まると言われている。だが、当時の國立さんにとって、無月経は「強さ」の証だった。
「県の強化合宿で、他校のライバルの子が『今ちょっと生理で……』と相談しているのを小耳に挟んだときは、『あぁ、自分のほうが頑張っているんだ』って思っていました。振り返れば、変な思考回路に陥っていたのだと思います」