ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNAに突如誕生、「オフェンスコーチ」って何をする? アナリストから抜擢、靏岡賢二郎に聞いた“ミッション”「僕のような人間でも勝利に貢献できる」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/29 11:04
昨季もアナリストとしてベンチの最前線で首脳陣と一緒に戦っていた靏岡賢二郎。今季からオフェンスチーフコーチとなった参謀役に話を聞いた
靍岡コーチは、春日部共栄高、日体大、四国・九州アイランドリーグの愛媛マンダリンパイレーツを経て、2010年のドラフト会議で8巡目指名されベイスターズに捕手として入団。一軍出場の機会になかなか恵まれず、4年目の2014年にようやく一軍でマスクをかぶることができたが、翌2015年シーズンを最後に現役を引退している(2019年に捕手不足のため一時育成契約)。その後はDeNAでブルペン捕手やファームバッテリーコーチ補佐などを務め、2020年にアナリストに転身した。
DeNA体制で訪れた変化「一から勉強」
日体大時代は、将来高校の指導者になりたくて教員免許を取得しながらプロ入りを目指したという靍岡コーチ。そもそも、データを扱うアナリストの分野に興味はあったのだろうか。
「最初はほとんど知識のないゼロベースでした。ただDeNA体制になってからというもの、データサイエンティストの必要性が出てきたり、チーム戦略部R&D(Research & Development=研究開発)グループが立ち上がる様子を見てきて、大きな変化を感じましたし、自分も乗り遅れないように勉強したいなと思っていました。練習で技術を磨いたり、体力を養うことも大事ですが、野球においてデータや数字も勝ち負けに直結すると感じていましたし、球団から機会をいただき一から勉強をして、それを現場に落とし込みたいという気持ちでここまで一生懸命やってきました」
データと選手の意識との乖離
現代の野球においてデータと数字の活用が重要であることは間違いない。ただ選手の個性は人それぞれ。画一的なアドバイスでは伝わらないケースも多く、またデータを重んじない選手もいる。この仕事を始めたとき、選手との意識の乖離は感じなかったのだろうか。
「最初は特にそれを感じました。10人いれば10人違う考え方をするし、ボールの見え方も、バットのスイング軌道も違う。だから誰に対しても同じような提言やアドバイスをしても上手くいくとはかぎりません」
大事だったのは、とにかく選手の考えを深く知ることだった。
「動きをよく見て、話をして、なにを考えて打席に入っているのか割り出すこと。端的にその選手に合ったプランニングを立てることが鍵であり、まずはそこを埋めていかなければいけない。特に1年目はそこにかなりの時間を費やしましたね」
「データ上こうだから、こうしろ」は好きではない
データや数字とはいえ、最終的にはコミュニケーションや感覚的な部分が重要になる。