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DeNAに突如誕生、「オフェンスコーチ」って何をする? アナリストから抜擢、靏岡賢二郎に聞いた“ミッション”「僕のような人間でも勝利に貢献できる」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/29 11:04
昨季もアナリストとしてベンチの最前線で首脳陣と一緒に戦っていた靏岡賢二郎。今季からオフェンスチーフコーチとなった参謀役に話を聞いた
「プレッシャーはありますか?」と尋ねると…
責任ある重要な任務。チームはもちろん靍岡コーチにとってもエキサイティングな日々になることは間違いないだろう。「プレッシャーはありますか?」と尋ねると、靍岡コーチは強がることなく素直な表情で頷いた。
「もちろんあります。長年、優勝できていないですし、とにかく今ある戦力をフル活用していかなければいけません。多くの選手たちが優勝を経験しておらず、ここは見方によっては脆さに繋がるかもしれませんが、しっかりと状況を理解した上で攻めて行かなければいけないチームなので、そこを言い訳にすることなく尽力していきたいと思います」
腹をくくった声の響き。新しい手法はリスクを伴うものだが、果たしてベンチ内の分析官がチームにどのような化学変化を起こしてくれるのか、開幕が待ち遠しい。
実績がないことは自分が一番理解しています
最後にひとつ、靍岡コーチには野球界の未来を思う、内に秘めた強い気持ちがある。
通常、一軍の首脳陣といえば現役時代に実績を残した選手が名を連ねるケースが多いが、靍岡コーチは現役時代、一軍出場はわずか24試合。正直、実績という部分では見劣りする。しかし、そんな自分が新たなアプローチで野球を深く勉強し、経験を重ね、チームから信頼を得たことで、大きな役割を与えられるに至った。前例なき立場。結果を出し、自分が新たな扉を開かなければいけないと考えている。
「コンプレックスとまではいかないまでも、実績がないことは自分が一番理解しています。しかし野球に対する情熱や、選手を活躍させたいという思い、チームを優勝させたいという気持ちは、誰にも負けないほど強いものを持っているという自負はあります」
何とか活路を見出したい
熱を帯びた口調で靍岡コーチは続ける。
「僕のような境遇の人間でもチャンスをもらい、結果を出せば、チームの勝利に貢献できるんだと、何とか活路を見出したいと考えているんです。そして多くの野球人が後に続いてくれれば、日本球界はさらに活性化されると信じています」
日本球界への提言。これは靍岡コーチばかりではなく、DeNAにとっても大きな挑戦となる。裏方からコーチへ。指揮官を戦略面で支える“軍師”靍岡コーチの道なき道を切り拓いていくその奮闘やいかに――。