マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
夏の甲子園→秋の大学野球開幕まで…学生野球“谷間の季節”にスカウトたちがコッソリしている“あること”「リストから外す決め手になることもあるんです」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/31 17:02
甲子園という大舞台が終わったあとの隙間の季節こそ、スカウトたちの腕のみせどころ(写真はイメージ)
この時期だからこそ分かる原石たちの「現在位置」
いい例が、大阪桐蔭高・前田悠伍投手(3年・180cm80kg・左投左打)だという。
「春からあまり投げてなくて、夏の予選も正直、彼の<現在位置>がわからないまま終わってしまったでしょ。それがこの前のU-18の壮行試合では、本調子とはいかないまでも、光が見えました。スピードは80%かもしれないけど、変化球のコントロールとキレは間違いなく戻り傾向。私たちにとっては収穫大の試合になったわけです」
たとえば東海大菅生高・日當直喜(3年・190cm105kg・右投右打)についても、「朗報」が届いているという。
「馬力、体格、150キロ投げられるパワーに、カウント球、勝負球でフォークを投げ分けられる技術。これだけ魅力的な剛腕も少ないんですけど、この夏はリリーフでちょこちょこっと投げただけで終わった。春のセンバツで痛めた肩が長引いているのか、ほかに要因があるのか……。担当のスカウトからは、体がひと絞りできて良くなっているって報告も来ているんで、一度練習見て、確かめないといかんなと思っているんです」
一方で、「ちょっと名前は言えないんですが」と、こんな例も挙げてくれた。
「ランナーなしで自分のペースで投げられる時は、無双のようなピッチングをする。なのにランナーを背負うとコントロールを気にしてか、どうしても腕の振りが緩む。この夏も『ここは(ボールを)置きにいくな』と思った場面で、案の定、ガツンとやられて負けてしまった。練習のピッチングなんか見ると、ほんと、ほれぼれするんです。だけど、どうしてもピッチングに<表>と<裏>を感じてしまう。この<裏>の部分がプロの指導で修正可能なものなのか、どうか。そこを見極めないと、スカウト会議で答弁のしようもないですから」