甲子園の風BACK NUMBER
慶応が極秘に行っていた「キモい大作戦」…選手が明かす“劣勢でも不敵な笑み”の真相「ホームランを打たれても拍手してました」
posted2023/08/30 06:00
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Naoya Sanuki
森林監督は記念撮影をまさかの拒否
金色の「K」が輝く帽子を被り、19人の選手が報道陣を前に整列している。
「森林さん、写真撮影お願いします」
優勝したメンバーから森林貴彦監督に声がかかる。
「いや、いいよ。練習着で来ちゃっているし」
ウェアを手でつかみ笑いながら、首を横に振る。とはいえ、遠慮しながら、最終的には選手たちと一緒に写る流れになるかと思いきや、最後まで固辞。本当に選手たちの輪に加わることなく、関係者と談笑しながら見守っていた。
監督なき優勝の記念撮影。そして、その後、メディア向けに行われた取材対応も“監督不在”だった。
監督&選手の横並び会見ではなかった理由
取材は、U-18代表に招集された丸田湊斗(みなと)を除いた甲子園優勝メンバーと監督がそれぞれのメディアに個別に応じる形式で行われた。つまり、監督のいないところで選手が話をするスタイルなのだ。
グラウンドには映像機材を持ったクルーが10社以上、総勢100名近くの取材者が詰めかけていた。
そんな多くの報道陣を前に、WBC日本代表やサッカー日本代表のように監督が選手と横並びになって応じる形ではなく、選手個々に任せる方式にしたのは森林監督の采配なのか。森林監督に聞くと、最終的には幹事社(報道側の代表者、この時は朝日新聞)と話し合って決めたそう。そして「監督&選手横並びの会見」にしなかった理由をサラリとこう語った。
「全員並んで、10分、20分の会見という形じゃ聞きたい話も聞けないでしょう」
「坊主頭」など高校野球の常識を疑い、優勝インタビューで「うちが優勝することで、高校野球の多様性を示せればいい」と話していた森林監督。凱旋の会見でも常態化した形式とは異なる一手を打ってみせた。
「子供扱いしない」姿勢
とはいえ、選手は高校生。大人数を前に自分のあずかり知らないところで何を言うか、監督として気にならないのか。「取材を受けるにあたって選手に何か伝えたか」と聞くとこんな答えが返ってきた。