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藤井聡太七冠とWタイトル戦1勝6敗に「2人は際どい勝負。ただ…」佐々木大地28歳は“気遣いの天才” 10年来の盟友・高見泰地30歳が知る素顔
posted2023/08/15 11:02
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
日本将棋連盟
将棋棋士は勝負の世界に身を置くライバルたちでありながら――どこかの学校のクラスを窓からのぞいているかのような――フレンドリーさを感じるようなエピソードが多い。そのオン・オフの切り替わりに癒される“観る将”も多いだろう。
藤井聡太七冠相手にダブルタイトル戦に挑んでいる佐々木大地七段と、高見泰地七段もそうだ。今からさかのぼること5年前の2018年6月、関東所属の若手棋士のツイッターアカウント「東竜門」で、高見はこんな投稿をしていた。
〈水曜の対局と昨日つけていたネクタイは、佐々木大地くんから先週お祝いでもらったもの。そして昨日帰り際に阿久津先生からネクタイをお祝いでいただいたので、本日の生放送でデビュー戦です(高見)〉(原文ママ)
きっかけは、森内俊之先生だったんです
高見、阿久津主税八段、佐々木のつながり。そのきっかけは、大棋士の呼びかけだったそうだ。
「佐々木七段との付き合いはかれこれ10年になりますね。きっかけですか? 実は森内俊之先生だったんですよ!」
高見が当時を回想しつつ「ここからは“大地くん”呼びでいいですか?」と前置きして――まるで少年のような笑顔を浮かべた。
「私が小学5年生の時に倉敷王将戦で高学年で準優勝したとき、長崎県代表だった大地くんは低学年の部で優勝していて〈強い子だな〉と思いました。そして中学生頃から奨励会でも存在自体は知っていたんですけど、本格的に会話をするようになったのは自分が棋士になってから(※高見は2011年に四段昇段)なんです。
住んでいるところが近いこともあって、森内先生が年賀状に〈よかったら佐々木大地くんと一緒に研究会をやりましょう〉と書かれていたんです。感激しました。すぐに大地くんにも連絡して、研究会を始めていただきました。もう1人は阿久津八段に来ていただくうちに、阿久津八段もレギュラー化してとても豪華な研究会が出来上がりました。棋士になりたてだったこともあり、とても嬉しかったですね」
森内先生、阿久津先生に飲み物を買っていったら…
森内といえば名人8期・通算タイトル12期で十八世名人の資格を持つ、いわゆる「羽生世代」の名棋士である。