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「選手とは、そらしゃべらんよ」タイガース・岡田彰布監督65歳の人心掌握術とは?「それを知ってしまったら、勝負に徹しきられへんやんか」

posted2023/05/01 17:01

 
「選手とは、そらしゃべらんよ」タイガース・岡田彰布監督65歳の人心掌握術とは?「それを知ってしまったら、勝負に徹しきられへんやんか」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季より阪神タイガースで指揮を執る岡田彰布監督(65歳)。その人心掌握術とは?

text by

酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

 18年ぶりの優勝を目指す阪神に65歳の岡田彰布監督が復帰した。前回指揮した2005年は選手と距離を置くことで頂点に立ったが、若手が多い今季のチームをどのようにマネジメントしているのか。発売中のNumber1072号に掲載された[虎将大いに語る]岡田彰布「選手とは、そらしゃべらんよ」より内容を一部抜粋してお届けします。【全文はNumberPREMIERよりお読みいただけます】

◆◆◆

 目を疑った。

 阪神は開幕2戦目の4月1日、京セラドーム大阪でDeNAと戦っていた。5-5で、6回の攻撃に入る。無死一塁。8番の小幡竜平が2球目でバントを決めた。ベンチに戻ってくると、ナインが出迎えた。そこに、岡田彰布監督も立ち上がって“パータッチ”のしぐさを示したのだ。

 18年前の姿が脳裏をかすめた。あのときは椅子に座ったまま、難しい顔をして試合の先読みをしていた。少なくとも、犠打を決めたくらいで、選手をねぎらう監督ではなかった。

 ショートでレギュラー候補の小幡は3月、開幕直前のオープン戦で送りバントに失敗していた。岡田の“パータッチ”には意図があった。苦笑いしながら明かす。

「次元が低いかもわからへんけど、普通はバントなんて当たり前のことよ。まあ、一つのバントの価値観とかな。チームに対してもな。そのへんを一つ一つ、積み重ねていかんとな」

 小技で生きなければいけない小幡にとってシーズン初の犠打だった。勝負師の珍しいしぐさは若者へのメッセージだろう。

「目線は下げないよ。一軍はこのレベルだという目線を下げたら、チームは強くならない。でも(選手との距離感は)ちょっとは妥協する部分はあるわな」

全然、選手と絡まない岡田監督

 こんなこともあった。

 4月4日、広島戦の4回に捕手の梅野隆太郎が西川龍馬の二盗を阻むため、小幡にセカンドスロー。きわどいタイミングでセーフになったが、指揮官は終盤に備えてリクエストを思いとどまった。攻守交代でベンチに戻った梅野と小幡に説明した。

「(2回に牽制死した)佐藤輝明のリクエストで、あそこで1回使ってたから、2回目だった。悪いな。ごめんな」

 親子以上の年の差がある若手に胸襟を開いていた。私は2004年から5年間の岡田阪神を、スポーツ新聞社のタイガース担当として追っていたが、その当時には見たことがない光景だった。

 だが、4月11日から、東京ドームで巨人3連戦に密着すると、そんな印象は裏切られてしまった。「おーん」「アレ」など、いわゆる「岡田語」が話題になるような、ほのぼのしたムードはなく、フィールドには張りつめた空気があった。

「全然、選手と絡まないですね……」

 ファインダー越しに覗くカメラマンが首をひねる。試合前練習で、岡田にピントを合わせて、シャッターチャンスを狙ったが、肩透かしを食った。3連戦の試合前練習中、グラウンドでは選手と会話ゼロ。話しかける姿を撮る思惑は外れた。

 正確には、一度だけ言葉を交わしている。前夜、4失点で12日に二軍降格が決まっていた浜地真澄が近づいてきた。課題とフォローの言葉を掛けたのだろう。約1分の会話。それだけだった。一軍で戦うナインと言葉を交わすことは、一度もなかった。

【次ページ】 「監督と話したことがない選手は結構、多いと思います」

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