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「頼む、行ってくれ」8年前のドラ1・ロッテ平沢大河(25歳)“4年ぶりの一発”を打てた理由とは? レジェンドに学んだ“準備の大切さ”
posted2023/05/02 11:03
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
現在、オリックスに並んでパ・リーグの首位に位置するロッテ。そんな好調マリーンズの中で存在感を見せているのが、今季プロ8年目を迎える25歳、平沢大河内野手だ。
チームに勢いをもたらした一撃があった。ZOZOマリンスタジアムで行われた4月8日の楽天とのデーゲーム。直前に逆転を許した8回の攻撃、2死一塁。1点を追いかける劣勢の中で、平沢は打席に向かった。
「今までなら代打もある場面で、打席に送り出してくれて、なんとか期待に応えたいと思っていました」
吉井監督「一発逆転しかないと思っていた」
ベテランの荻野貴司外野手が同6日の日本ハム戦で右太ももを痛め戦線離脱。代わって一軍に昇格したのが平沢だった。一軍合流後、すぐに「9番・右翼」でスタメン出場となったが、それまでの打席は併殺、二ゴロ、四球……出塁はしているものの無安打で迎えた打席だった。代打が送られてもやむをえない状況下でチャンスをもらえたことに意気を感じた。
送り出した吉井理人監督は振り返る。
「あの展開で勝つには一発逆転しかないと思っていた。だから腹を決めて、絶対に打ってくれと思いながら見ていた。前の打者の安田(尚憲)、(佐藤)都志也にも期待していたけど、左飛と三振に倒れてチャンスが萎みそうになったところで、(平沢)大河が思いっきり振ってくれた。イメージ通りの逆転劇」
平沢はその時の打者心理を明かす。
「(その日は)2打席凡退していたけど、その前の打席が四球で自分の中では低めの変化球をしっかりと見ることが出来ている感覚があった。あの打席では3ボール、1ストライクという状況になったので、ストレートがストライクゾーンに来ると自分の中で割り切ってフルスイングをしようと思っていた」
冷静に、かつ熱くバットを振った。インコース、腰よりやや高め。ストライクゾーンに入ってきたストレートに、クルっと腰を回転させてフルスイングすると打球は高く舞い上がった。大歓声がこだまする。
「ちょっと打球が上がりすぎかなと思った。ポール際でもあったので切れるかなとも思った。頼む、行ってくれという感じでした」
打球は平沢の想いをのせてライトスタンドに吸い込まれていった。平沢自身にとって2019年以来、プロ通算8本目の本塁打は起死回生の逆転2ラン。ゲームはこの1点のリードを守り切り、チームは4連勝。翌9日も勝利し、連勝は「5」まで伸びた。