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「悔しさです。ずっと悔しさです」坂本花織(22歳)が世界選手権2連覇で流した“涙の意味”は…選手たちから尊敬される人間性「カオリは憧れ」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/30 17:01
世界選手権女子シングルで2連覇を達成した坂本花織。フリーの演技後には、悔し涙を流した
「カオリは憧れ」坂本はなぜ選手たちから尊敬される?
2022年2月に北京オリンピックで銅メダルを手にして以来、坂本はプレッシャーにさらされ続けてきた。ウクライナ侵略戦争の制裁でロシア勢が抜け、最有力候補とみなされた昨年のモンペリエ世界選手権では、見事に初優勝を決めた。だが皆から追われる立場として迎えた今季はNHK杯で優勝を逃し、進出したGPファイナルではまさかの5位に終わるなど、演技が安定しない試合もあった。
それでもシーズンのもっとも重要なこの大会で、タイトルを守った坂本を2位のイ選手はこう絶賛した。
「2016年からずっと憧れてきました。彼女はジャンプの前にスピードを減速しないのがすごい。今回一緒に表彰台に立つことができてすごく嬉しいです」
3位のルナ・ヘンドリックスも「もう何年もカオリを尊敬してきました。彼女はスピードがあってジャンプが大きい。彼女のレベルに達するために、学ぶべきことがたくさんあります」と語った。横では坂本が、何とも照れくさそうな笑みを浮かべる。この彼女の飾らない人柄も、多くの選手たちから慕われている所以だ。
「どんな状況でも、自分を見失わずに」
フリーでリカバリーできたこと以外に、4年前の自分と比べてどこが成長したと思うのか。そう聞かれると坂本はこう答えた。
「4年前はやっぱりジャンプのことで精一杯だったりとか、まだまだエレメンツでしか自分は点数を稼げないという考えが大きかった年なので、その時に比べたらこの4年間で、ステップスとか他の表現で頑張ろうという気持ちになれたところは、成長できたかなと思います」
この大会では、SP、フリーともに3コンポーネンツは全選手内でトップを保って世界女王の貫禄を見せつけた。
22歳の坂本は、来季も追われる立場で挑むことになる。
「もっと強い選手になれるように頑張ります。どんな状況でも、やっぱり緊張してもあせっても、自分を見失わずにしっかり滑り切れるような選手になりたいです」
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