濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「葛西純を見ろ、この背中を見ろ」“デスマッチのカリスマ”は、2連敗でもドラマを作った…異例の第1試合で竹田誠志と見せた「全力疾走」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/07 17:00
“4年ぶりの黄金カード”となった葛西純vs竹田誠志
「俺と葛西純の闘いはずっと続く。どっちかがくたばるまで」
「今日、竹田とやった意味、分かるか? アイツは復帰したけど、なんか吹っ切れてなかったんだよ。家のことも娘のこともあるし、前のアイツじゃねえんだ。だからこそ、第1試合で2人きりで狂い合わなきゃいけなかった。タイミングを作らなきゃ、アイツがダメになっちまう」
葛西の言葉が聞こえたという竹田はこう返した。
「俺の中では完全復活したとはいえ、心のどこかにモヤモヤはあったよ。それは親でも兄弟でもファンでも気づかないところ。それを葛西純は全部分かってた。今日、第1試合で闘って初心に戻ったっていうか、若い頃のデスマッチへの気持ちとかも思い出して、いろいろ整理がついた。今日は勝ち負けとかどうでもよかった。これは俺の生き様だから。
(葛西は)いろいろあった中でサポートしてもらった兄弟みたいなもの。その感謝を込めてやらせてもらった。ただこれがゴールじゃない。やめるとかはない。俺と葛西純の闘いはずっと続く。どっちかがくたばるまでやってやるよ。しみじみしたこと言うのは今日までだ」
葛西が敗れても生まれたドラマ
葛西は「次はタイトルマッチだ」と言った。竹田は「もっとデカい舞台で」。葛西純が求めた第1試合は、竹田誠志のためにあった。ドリュー戦も竹田戦も葛西は敗れた。しかし敗れることで、つまり対戦相手が葛西純に勝つという結果を得ることで生まれたドラマがあった。
2月2日の大会では、FREEDOMSのシングル王座が移動した。ドリューを下して新王者になったのはビオレント・ジャック。メキシカンの彼もドリュー同様に日本に住み、家族もできた。故郷を離れてデスマッチの頂点を目指す、いわば同志によるタイトルマッチだった。ジャックはスペイン語を話し、ドリューは英語、観客は日本語。けれどデスマッチという共通言語があるんだとベルトを巻いたジャックは言った。
気持ち、あるいは心意気。そのやりとりがプロレスでありデスマッチだ。血を流すことで平和を訴え、友情を育み、言語や国籍や人種を超える。そういう世界が、リングの上には存在する。
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