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「葛西純を見ろ、この背中を見ろ」“デスマッチのカリスマ”は、2連敗でもドラマを作った…異例の第1試合で竹田誠志と見せた「全力疾走」
posted2023/02/07 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「悪魔にだって友情はあるんだーっ」
昭和に始まり現在も新シリーズが連載中の『キン肉マン』に出てくる名台詞である。言葉の主は悪魔超人のサンシャイン。ファイトスタイルは悪逆非道でも、仲間に対する思いは正義超人にも負けない。
同じことはデスマッチにも言える。蛍光灯で殴り合い、ガラスボードに叩きつけ、竹串の束を頭に突き立てる。だかそれは互いの技量とタフさを信頼しているからできることだ。かつては“遺恨清算”の最終手段といったイメージがあったデスマッチだが、現在ではプロレス内のカテゴリーの一つになっている。
因縁の物語があったとしても、単に憎み合っているわけではない。欠場を要するようなケガを負わせるために攻撃するのではない。デスマッチを“残酷ショー”としてだけ捉えるのは、はっきり間違いだと言っていい。
「デスマッチは生きるためにやるもの」
「家に帰るまでがデスマッチ」
そんな名言を残したのは葛西純だ。これまで数々の名勝負を残してきた“デスマッチのカリスマ”。昨年は新日本プロレスのエル・デスペラードとの一騎打ちが話題になった。試合内容だけでなく、その言葉もだ。
「これぞ葛西純…」デスペラードに発した言葉
念願の大一番に向けて「死んでもいい覚悟」を口にしたデスペラードに対し、葛西は言った。
「世の中には生きていたくても死んじまうヤツがゴマンといるんだ。新日本プロレスに入門して、デビューして、新日本ジュニアのトップ獲って、最高の人生を送ってるヤツが死んでもいい覚悟でリングに上がるなんて言うなよ!」
これぞ葛西純、というマイクだった。葛西にとってもデスペラードにとっても、この試合は特別なもの。闘うことで葛西の魂にもさらに火がついた。「ケツを叩かれた」面もあるという。ただ、その言葉は“いつも通り”でもあった。拳に巻いたバンデージには「Against War」と書かれていた。過去の試合でも、こんな言葉を残している。