濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「葛西純を見ろ、この背中を見ろ」“デスマッチのカリスマ”は、2連敗でもドラマを作った…異例の第1試合で竹田誠志と見せた「全力疾走」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/07 17:00
“4年ぶりの黄金カード”となった葛西純vs竹田誠志
「お前ら、これを知らずに人生終わるのか?」
「世の中は無駄な血を一滴も流すな。デスマッチファイターがお前らの分まで血を流してやるからよ」
「今この世界中でいろんなことが起きてる。内紛もあるし血を流して命を落とす人がいる。でも血を流す非日常はリングだけでいい。血が見たけりゃデスマッチを見にこい」
「デスマッチファイターはどんな状況でも立ち上がるし向かっていく。その姿を見てほしい。残酷だなんだって言われるけど、一度見たら考えが180度変わると思う」
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「こんな素晴らしいものをなぜ見ないんだって思いますよ。デスマッチと言えば残酷だっていう風潮は変えたい。“お前ら、これを知らずに人生終わるのか?”って」
葛西のファンは、試合の“狂いっぷり”だけを楽しんでいるのではない。その言葉、体を張っているからこその強いメッセージに胸を打たれるのも“葛西純を見る”という行為なのだ。現在48歳。それを本人は「レベル48」と表現する。
「老害と言われようがあきらめが悪いと言われようが、葛西純は葛西純。歳とりゃ成長が止まる? 力がなくなる? 持久力がなくなる? そんなこと人間が決めただけだろ。人間が決めたことなんか人間が覆せるんだよ。世の中のサラリーマン、中高年、窓際族、家庭に居場所のないお父さん、学校に居場所がないヤツも葛西純を見ろ、この背中を見ろ」
葛西vsドリューには“蛍光灯で作った十字架”
昨年12月25日、所属団体FREEDOMSの後楽園ホール大会。恒例となっている自身のプロデュースイベントで、葛西はドリュー・パーカーが持つKING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIPに挑戦した。デスマッチをやるためにイギリスから日本に移り住んだ若者との初シングル戦。葛西が久々の戴冠を果たす、その気運は高まっていた。デスペラード戦では敗れたとはいえ、名勝負を演じたことで勢いに乗っているのは間違いなかった。
容赦のない真っ向勝負。ここにきてフィジカルトレーニングにも力を入れている葛西は“うまさ”に頼ることなく受身を取り、血を流す。ベテランの最後の輝き、という感じすらしない。ただただ現役の、一流のデスマッチファイターがそこにいた。