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藤井聡太14~20歳の将棋を“歴代名人”はどう絶賛したか「藤井さんは特別な才能を」「羽生さんも藤井さんも18歳ですでに…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/01/22 17:00
藤井聡太五冠は順位戦A級を戦うとともに、羽生善治九段との王将戦に臨んでいる
「精度的には藤井さんが一番高いと思いますが、それでもAIで検証するとミスもあります。そういう意味では棋士の技術向上はまだこれからなんですが、若い藤井さんが飛躍的に伸びていくのも見えています」
プロになり立ての頃の藤井は、詰将棋で培った終盤力をベースに鮮やかに勝つケースが見られた。しかし近年は序盤から中盤にかけての研究でも卓越したものを見せ、さらには最善手を指し続けている。それによってAIが自然と藤井優位の数値を示す「藤井曲線」の存在もファンの中で話題になっている。その成長の予感を、森内はいち早く感じ取っていたのだろう。
渡辺名人は「中学生の藤井聡太」をどう見ていたか
<名言3>
藤井君の将棋は、まさに時代の流れを象徴しているんですよ。
(渡辺明/Number932号 2017年7月27日発売)
◇解説◇
渡辺明名人はタイトル通算期数で歴代4位の31期、特に竜王では9連覇を含む歴代最多の計11期、棋王も歴代2位となる10期(それも10連覇)と、2つの永世称号を手にしている。
様々な分野に興味のアンテナを張っている渡辺が、デビューしたての頃の藤井四段について、“野球やサッカーで考えた場合のすごさ”を語っていたことがある。
「プロ野球に例えるなら並の新人王の成績では当然なくて、高卒で3割30本を超えるレベルです。2割8分20本程度じゃない」
「サッカー選手のポジションで言えば『8番』のような前線の攻撃型の選手なんですけど、守備をしてもうまくて何でも出来てしまうから、1人で全部やっちゃうような選手と言えばいいでしょうか」
当時、藤井は新記録となる「デビューから29連勝」など、圧倒的なパフォーマンスで世間の衆目を集めていた。渡辺は20連勝頃から注目していたというが、10代半ばにして「いろんなふうに論じることが出来る将棋」との印象を持っていたのだという。
ここから3年後、渡辺は20~22年と計3度のタイトル戦で藤井と対局。棋聖、王将のタイトルを奪われた。23年には自身が保持する棋王戦、さらに順位戦A級の結果次第では名人戦の挑戦者として藤井が登場する可能性もある。
初の竜王を得た04年以来、渡辺はいずれかのタイトルホルダーとして将棋界の頂点を走り続けている。再び挑戦者・藤井を迎え撃つ際には、どのような戦略を持って相対するのだろうか。